2022年(令和4年10月)66号

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蜂の羽音に慣れなくて

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 「今は、イチゴ農家に交配用で貸し出す蜜蜂の準備と、もう一つは11月中旬以降に千葉県の房総半島へ越冬のために蜜蜂群を移動する準備ですね。小まめに餌をやったり、ダニの駆除をしたり、越冬の準備ですかね。近々では、磐梯山麓の蜂場に置いてある巣箱を平野部に移動させようと思っています。磐梯山の麓と平野部では2、3℃気温が違いますからね。女王蜂の産卵ができるだけ続くようにするためなんですけど、これから春まではいかに力を付けて、それを維持させるのが大事になりますから。平野部だと近いということもあってちょこちょこ見に行けますし、急に温度が下がれば防寒用の厚紙を巻いたりも出来ますしね」

 久雄さんが秋の仕事を説明をしながら、五十嵐さんの仕事をしている黒井蜂場を案内する。

 「ここは育成群の蜂場なんです。春に向かって蜂数を増やさなければならないので、元群から卵を確認できた巣板と働き蜂を二つの群に分けると、女王蜂の居ない群は変成王台を作って新王を誕生させます。これを割り出しというんですけどね、割り出しても、元群から1群か2群しか増やすことはできないですけどね。平野部の方がスズメバチもオニヤンマも少ないし、ここには熊が出ませんしね。山(の蜂場)は敵が多いんですよ」

 久雄さんが事務所から近い黒井蜂場の役割を教えてくれる。

 黒井蜂場に並べられている巣箱の前面は「中年の門番」という名のスズメバチを防ぐ装置で覆われていた。「スズメバチに集団で襲われないため」で、スズメバチを捕獲は出来ない。五十嵐さんが割り出し群の巣板を小さめの巣箱から大きい巣箱に移している。

 「イチゴの交配に出すには巣板7枚用の小さな巣箱が必要なんで、割り出した群を9枚箱に移して、7枚箱の空箱を確保しているんです」

 黙々と仕事をしていた五十嵐さんが説明する。蜂児の巣板2枚と産卵枠が1枚、それに餌として蜜巣板を1枚、その間に給餌器を挟み込む。割り出し群を移動させて空になった7枚箱の蓋を開けたまま群を移動させた9枚箱の上に横にして載せている。

 「蜂を巣箱の外に払うと、次の日蜂場に来てみると、気温が急に下がって動けなくなった蜂を見ることがありますからね」と、残った蜜蜂が移動しやすいための心憎い優しさだ。

 五十嵐さんは養蜂の仕事を始めて「7年目ですかね」と、もう充分な経験を積んでいる。「養蜂は面白いです。自分が考えているように、蜂はならないので、試行錯誤の繰り返しですけど……。自然の中で仕事をできるのは魅力だなと思っています。嫁(三女・恵さん)と同じ物流の仕事をしていたんですけど、結婚して養蜂の仕事を始めた頃は、正直、蜂の羽音に慣れなくて、気になって振り払いたくなるんですよ。羽音に慣れるまでは少し大変でしたけど、慣れてしまった今では、やり甲斐のある仕事だと思っていますね」

 巣板一枚一枚の両面を丹念に見ている。産卵の状態を確認するのも大切だが、巣箱を移動する前に女王蜂の存在を確認することが肝心なのだ。「たまにですけど、蜜枠の方に女王蜂が居ることがありますね」と、五十嵐さん。女王蜂が群の中に居ないとなれば、次の対策を考えなければならない。大ごとだ。

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