2022年(令和4年10月)66号

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横になりたいという一心

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 久雄さんは、花恵さんと結婚するまでは保険会社に勤める会社員だった。「会津営業所の勤務でした。結婚してからしばらくは会社に勤めていたけど、2代目が若くして亡くなって房子さんが跡を継いでいたんですけど、私の気持ちとしては、創業家を潰すことの抵抗が強かったのかなと、今考えると思いますね。人というものは複雑な絡みがありますよ。最初はね、(養蜂場を継ぐことに)やっぱりエーッという気持ちはありましたけど、他に誰もやる人間が居なかったので……、廃業するか続けるかでしたから。私が始めた頃は『あれ、長嶺養蜂場って止めたんじゃないの』って言われる状態でしたからね。房子さんは苦労したと思いますよ。私が継ぐと決めて、初めて越冬で房総に行った時ですけどね。うちの(花恵さん)がトラックの助手席に乗って、房子さんと以前うちで働いていた弟子がもう一台のトラックに乗って、9時間くらい走って走って千葉に着いたら、ここで休もうとなったのですが、それが道の駅ですよ。

 何なんだよと思いましたね。9時間というのも辛かったです。走っても走っても着かない。横になりたいという一心でしたね。こういう世界があるのかと思いましたよ。25年くらい前の話ですね。でも、最初は養蜂が意外と楽しかったですよ。ギスギスした人間関係はないし、自然の中での仕事ですし……。しかし、規模を大きくしていかなければならないと……、のんびりやっていれば良いという時期が過ぎると、やっぱり苦労も出てきますよね。一人ではできない、蜂を置く場所をどうする、トラックを大きくしなければならない等々、次々と課題が出てきますからね。蜂との相性は特に抵抗なく出来ましたけど、蜜蜂のことは分かんないから、本を読んで調べたりしましたね。だいたい蜜蜂は眠らないですからね。これはすごいですよね。産卵枠は35℃を保たないといけないとか、組織化された社会性や、太陽を中心として距離を測る力や匂いを感じる力とか、蜜蜂ってすごいですよね」

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