涙、涙で、タオル持って行かないと
横沼蜂場の入口には蜜蜂が蜜や花粉を採るセイタカアワダチソウが満開
「先ほど見てもらいました初代忠造さんの日記を見ると、しょっちゅう家に電報を打っていますね。当時は下手するとひと冬、千葉に居るようなこともあったみたいですよ。それで、私は、会津よりずっと暖かい県内の浜通りにも蜂場を確保してあるんです、大熊町。東日本大震災の時の東京電力福島第一原子力発電所事故による放射能汚染の問題があるもんで、育成と越冬で蜂場を借りているんですよ。大熊町では蜜は一切採らないし、育成だけです。今、大熊町で蜂場の申請をしているのはうちだけです。震災の後、大熊町から会津若松市に町の人口の5、6割が避難して来て、仮役場が出来て、大熊中学校の仮校舎が出来て、卒業式なんかもやって、ちょうど私が地元の自治会長をやっていて、中学校の卒業式に地元代表で出席しましたけど、涙、涙で、タオル持って行かないと駄目ですよ。身内みたいに思っていて、だから大熊町に蜂場の申請をしたんですよ。復興にはまだまだ10年単位で掛かりますよね。越冬だけで言えば千葉の方が良いですよ。千葉は3月からの気温の上昇がものすごいんですよ。4月になると、もう割り出しが出来るんですよ。雄蜂が3月下旬には生まれてくるんですよ。浜通りは一か月遅れますからね」
先ほどからスズメバチの捕獲器を掃除している久雄さんだが、私との話ばかりに集中して蜂場の仕事はしないで良いのか気掛かりになってきた。
「今日は雨模様だったので、捕獲器の掃除とか整理をしようかなと思っていましたので……」と、慌てる様子はない。時計を見ると、もう昼を過ぎていた。
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