2022年(令和4年10月)66号

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蜜蜂の1ミリは人間の35センチ

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 久雄さんは事務所の横に停めた軽トラックの荷台に積んでいた巣枠の掃除を始めた。こびり付いたプロポリスや蜜ロウをハイブツールや包丁で削り落とし、三角駒を12ミリ用から8ミリ用に取り換えている。

 「巣箱の外側に置く貯蜜用巣板のビースペース(間隔)は12ミリで、内側に置く育成枠は8ミリにするんです。蜜蜂の1ミリは人間の35センチに当たりますから、1ミリも疎かにはできないんですよ。蜜蜂がビースペースに入って、広いね、ここは蜜を溜める場所だな、ここは狭いな、育成する場所だなというのが蜜蜂に分かる訳ですよね」

 「福島県はちみつ品評会で農林水産大臣賞が設けられたのは2017年なんですけど、その第一回にうちのトチ蜜が輝いたんですよ。地元の特産ということで、トチ蜜が多いですね。会津の奥にはトチノキが多いんですよ。トチノキ20年、アカシア10年と言って、トチは成長が遅いんで蜜を採るとなると、20年30年後、次の世代のために植樹をするということですね。ソーラーパネルを設置するのにアカシアが伐られていると話を聞いたことがありますが、うちの個人所有の山が東京ドーム3個分ほどありますので、山を開墾して密かに植樹をしているんです。近ごろは天候不順で、これからいよいよ(採蜜)という時に、ガクンと気温が下がって、おまけに雨ばっかりというのは自分ではどうしようもなく辛いですね。この辺は標高約300m、猪苗代駅で500mなんですが、標高1000mの所に蜂場があれば500mの所にも蜂場を持つなどリスク回避の必要性を感じますね。標高の異なる蜂場は実際に持っていますが、更に条件の異なる蜂場を持たなければと思っていますし、花の木を植えていかないといけないですね。11月になれば初雪ですからね。どんどん冬がやって来ますから……」

 久雄さんは63歳。そろそろ次の世代へ引き継ぐ段取りを意識しているようだ。

 「私が会社員から養蜂を始めたのが、五十嵐さんの年齢の頃だったんで、そろそろ世代交代の時期かなと思っているんですけどね」と、打ち明ける。養蜂場の場所を開拓したり、花の咲く木を植樹したりしているのは、次の世代を思ってのことである。現在、養蜂部長の五十嵐さんが4代目を継ぐことになれば、初代のひ孫に当たる長嶺清志さんが5代目として控えている。

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