2022年(令和4年10月) 66号

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最初に生まれた子が家を継ぐ

 「昭和7年創業なので、今年でちょうど90年。福島県でうちが一番古い養蜂業と思います。当時は蜂蜜が高額でしたので、たくさんのお弟子さんが居て、その方たちが、それぞれ独立して福島県に養蜂が広がったと聞いています」

 株式会社長嶺養蜂場の代表を務める長沼久雄(ながぬま ひさお)さん(63)は名刺交換もそこそこに開口一番、初代忠造(ちゅうぞう)が養蜂を始めた当時の家族の歴史を語り始めた。その語り口に、長嶺養蜂場が福島県で最初に養蜂を始めた誇りと自負が伝わってくる。

 「この家は元々黒沢という姓の家だったんですが、初代は黒沢家の長女と縁があって結婚し、しばらくして養蜂を始めたということなんです。この辺り会津地方だけの風習かも知れませんが、最初に生まれた子ども、それが男であっても女であっても、その子が家を継ぐことになっていまして、結婚したのが黒沢家の長女だったので、長嶺忠造さんも、長嶺を名乗りながら黒沢の家に住み続けて、黒沢の両親と一緒に暮らしたということだと思います。忠造さんは当時まだ(周辺の町村を編入して会津若松市となる前の)若松市の時代で、市の役場職員として勤めていたんですが、経緯は良く分からないんですけど、昭和7年に養蜂を始めているんです。2代目の長男は本名を忠男というんですけど、2代目忠造を名乗っていましたね。忠男さんは53歳の若さで亡くなってしまいましてね、後を、同じ集落のすぐ近くから嫁いできた妻の房子さんが守っていくんですが、女手一つでは大変だったと思いますよ。房子さんは現在90歳、多少耳は遠くなっていますけど、頭脳は明晰で話に支障ありませんので、後で話を聞かせてもらいましょうかね」

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