巣箱を置いておけば蜂蜜が溜まるもんだ
トーマネ蜂場の内検を終えた野々山さん
それにしても、従業員を雇って自動車修理工場を経営していた野々山さんが、どうして養蜂家の道を歩くことになったのだろうか。夏場は、岩手県に蜜蜂群を移動させるようになって4年目。2年目の夏は、コロナ禍の真っ只中だった。他県ナンバーの車で岩手県に居るだけで肩身の狭い思いをしている時、埼玉ナンバーの車で行っても快く受け入れてくれたので、恩義を感じているという食堂で夕飯を一緒に摂りながら、野々山さんの話は続いた。
「蜂は元々嫌いだったんです、と言うより大嫌いでした。子どもの頃ですけど、花に止まっている蜜蜂を帽子で捕ろうとして刺されたことがあって、それ以来、蜂は駄目でしたね。羽音が聞こえるだけで体が緊張するんです。ただ、母方の叔父が養蜂をやっていて、蜂蜜は大好きだったんです。その叔父が亡くなると、身近にあったあの美味しかった蜂蜜がなくなって、それから、美味しい蜂蜜を探し始めたんです。
見付けやすいように女王蜂の背に印が付けてある
一旦は美味しいと思える蜂蜜に出合ったんですけど、後で、混ぜ物をしているのを知って、自分の味覚を疑いましたね。煙草が原因かも知れないと、煙草を止める動機にもなったんですが、なかなか本物の美味しい蜂蜜に出合えなくて、埼玉県で知られた大手養蜂問屋に行ったら、大瓶だと1万円もする訳ですよ。その店では養蜂用具も販売していて、問屋さんに『自分で飼ったら良いんじゃないの』と言われて、巣箱と蜜蜂1群を買ったんです。元々、蜂は嫌いだったんだから上手くいかないですよ。巣箱を置いておけば蜂蜜が溜まるもんだと思っていたから庭に置いたままにしていたんですけど、1年も経たないで、もう夏になる前には全滅。何で、と調べたら養蜂と言うくらいだから、自分で管理しないといけないんだと思い至りましたね。それから暫く後、家の垣根になっているお茶の木に、どこからか分封してきた蜜蜂が止まって巣作りしていて、近くの養蜂家と一緒に捕まえたんです。それが切っ掛けで、今度は5群、新たに買って、そこから蜂屋さんに会いに行って勉強したんですよ。蜂屋さんから『蜜蜂1群から蜂蜜が一斗缶2つ採れる』とか『蜂は増えるんだよ』と教えてもらって、必死で蜂の世話をしたんです。自動車修理工場もやっていましたから、早起きしてやったり、夜やったりして刺されながらやる訳ですよ。そしたら、蜜蜂が5倍になったんです」
Supported by 山田養蜂場
Photography& Copyright:Akutagawa Jin
Design:Hagiwara Hironori
Proofreading:Hashiguchi Junichi
WebDesign:Pawanavi