2022年(令和4年12月)67号

発行所:株式会社 山田養蜂場  https://www.3838.com/    編集:ⓒリトルヘブン編集室

〒880-0804 宮崎県宮崎市宮田町8-7赤レンガ館2F

この系統を増やしていきたい

1

 翌朝、野々山さんが案内してくれたのは岩手県下閉伊(しもへい)郡山田町にあるトーマネ蜂場。野々山さんの蜂場を目にするのは初めてだ。三方を小高い山に囲まれた小盆地の地形で、周辺にはカラマツやケヤキの大木が黄色く色付いている。裏返したコンテナに巣箱一つ一つを載せて整然と並ぶ蜂場は、野々山さんの几帳面な性格が現れているのだろう。燻煙器を準備して面布を被り、熊避け電柵の電源を切って中に入った。巣箱群の中央辺りで一つの巣箱の蓋を開け、野々山さんが私を呼ぶ。

 「この系統は一般的にはゴールデン種と言われているけど、私の系統ですよね」と、巣板に集る明るい黄色の体をした蜜蜂を指に乗せて見せる。女王蜂の背中には見付けやすくするため赤い印が付いている。「この

 野々山さんは蜂数の少ない群の女王蜂を大きめの王籠に入れて、働き蜂も一緒に10匹ほど王籠に同居させる。女王の世話係だ。砂糖水を含ませたスポンジを餌として入れ、少しの間は王籠の中で生きていけるような条件を整えた上で、女王蜂は居るが蜂数の少ない別の群を併せて大きな一つの群としている。いわゆる合同作業だ。その際、女王蜂の居ない群の蜂が攻撃されたりしないように匂い消しとして使うのは「ミツカンのラッキョ酢が良いけど、薄めた日本酒、できれば〈東力士〉が良いんですけど、薄めた焼酎でも良いんですよ」と、野々山さんが冗談とも本気とも受け取れるような言い方をする。

 しかし、野々山さん、この蜂場では2群を合同しただけで、特に作業らしい作業はしなかった。私を案内するのが主な目的だったのかも知れない。

1
2
3
4
5
6
7

▶この記事に関するご意見ご感想をお聞かせ下さい

Supported by 山田養蜂場

 

Photography& Copyright:Akutagawa Jin

Design:Hagiwara Hironori

Proofreading:Hashiguchi Junichi

WebDesign:Pawanavi