11月、船を待つ若者は短パン
ニライナリゾート・エントランスからデッキを望む
目指すのは沖縄県八重山諸島の中で最も大きな亜熱帯海洋性気候の島、日本最西端の与那国島に近接する西表島だ。八重山諸島の中心的な役割を果たす石垣島から西へ高速船で約40分。取材に訪れたのは昨年の11月末だった。夏の観光シーズンから外れひっそりしていると思い込んでいたが、西表島へ渡る高速船が発着する石垣島の離島ターミナルに着いて驚いた。島の生活者に交じって、観光目的らしき半袖、短パンの若者たちが大勢で船の出発を待っている。冬の服装で港に立つ私は明らかに浮いていた。
ニライナリゾート・デッキから南西方向を望む
翌朝、民宿で朝食を摂っていると、ニライナ養蜂場の松永政己(まつなが まさみ)さん(58)から電話が入った。「9時から時間が空きそうですから、その時間に来られませんか」。松永さんは養蜂業と同時にニライナリゾートを経営しているが、この日を境に長期休暇に入ると聞いていた。最後の客を送り出して、私の取材ために時間を空けていただいたようだ。
亜熱帯植物が茂るニライナリゾートのエントランスを抜けて木造デッキに入ると、キャンプファイヤーができるレンガ炉が中央に造ってある。リゾートの客たちは、ここで星空を見上げて島の夜を楽しむのだろう。
「いらっしゃい」と声のする大きなガラス戸の内側に真っ白な髭を蓄えた松永さんの笑顔が見える。愛犬のチョッピーがガラス戸の隙間から飛び出してきて私に纏わり付く。
「外は蚊がいますから」と、レストラン風にテーブルが並ぶロビーに私を招き入れ、大ぶりのカップにコーヒーを注ぎながら松永さんが語り始めた。
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