蜂の営みは組織作り
風雨に煽られるニライナ養蜂場の巣箱
翌日は、松永さんの予報どおり風雨の激しい荒れ模様の西表島だった。蜜蜂が気になって一人で蜂場へ行き、巣箱を見ていた。亜熱帯植物の葉は時折激しく揺さぶられるが、巣箱の周辺はほとんど風雨の影響を受けていない。後ろに亜熱帯植物の林があり、地形的に風雨を避ける場所に蜂場が設置されているのだ。後に電話で松永さんに確認すると、暴風雨はこの後3週間も大荒れが続いたそうだ。「蜂は飛べない。給餌もできない。弱い奴(蜂群)は相当参っていましたね」という状態だったと言う。夏の台風だけではなく西表島の天候は冬でも蜜蜂にとって過酷なのだ。
その電話の際、「ニライナ養蜂場」の「ニライナ」について松永さんに尋ねた。「造語なんですよ。沖縄に伝わるニライカナイという遥か辰巳(南東)の彼方にある理想郷の概念を基にしているんですが、ニライナは理想郷として発展を続けたいという願いを込めた言葉なんです」。26歳の時に西表島に「夢見る少年」として上陸し、ニライナを心の支えに30余年間。「蜜蜂と話ができるまで付き合って、蜂を見れば西表島の自然が見えるくらいの関係性を作っていきたい」と熱っぽく語る姿を思い起こすと、松永さんは現在も「夢見る少年」のままなのだと思えてくる。
風雨に煽られるクワズイモ(右)と月桃の葉
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