2023年(令和5年1月) 68号

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採蜜は季節を問わずできた

 松永さんに教えられて、髙橋純一氏(玉川大学)と片田真一氏(琉球大学)の論文(2002年)「西表島の養蜂とセイヨウミツバチの帰化状況」を読んでみると、「西表島には在来のニホンミツバチを含めてミツバチ属のグループは生息していないことが分かっている」とある。そこに「1965年に島の住民が沖縄本島からセイヨウミツバチを数群導入」したが、この「試みは失敗」。その後、「1968年に小学校の先生が60群を導入」し、2年後には「300群まで増やすことができて島内で希望する住民に分け与えた」が、「1971年の大型台風で全滅したそうだ」とある。

 この論文では、この時に「生き残ったセイヨウミツバチが調査当時に生息していた母群となっている可能性が非常に高いと考えている」とあり、西表島は「一年中温暖な気候で採蜜は季節を問わずできた」ことと、「天敵と呼べる捕食者がいないことがセイヨウミツバチの帰化を容易にさせている原因の一つ」と述べている。

 この論文の基となった調査が行われた2000年から2001年の2年間で確認されたセイヨウミツバチは島内ほぼ全域で目撃されたとある。大型台風で全滅した時から30年後の調査なので、ここで目撃されたセイヨウミツバチの匹数は定かではないが生き残って野生化した蜜蜂と言えるだろう。

 もう一点の注意すべき記述は、「2001年7月に採集した自然営巣群からはミツバチヘギイタダニの寄生が見られたため、当時から既に感染していたようである」とあり、この時点で松永さんが心配している島の生態系の一端が崩れていたのは残念なことだ。しかし、だからこそ生態系に影響を与える生物の持ち込みには慎重であるべきだと思わせた論文だった。

 

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