2023年(令和5年1月) 68号

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夏の蜜源はサガリバナ

 まもなくすると松永さんが軽トラックに巣箱を一つ積んで戻ってきた。愛犬チョッピーも助手席に乗っている。松永さんが簡易バーナーの炎で、降ろした巣箱の隅々まで焼いて消毒する。まだ、松永さんはビーチサンダルのままだ。燻煙器に火を着け、真っ白なつなぎの防護服に面布を着け、白い長靴を履くと、いよいよ本格出動である。愛犬チョッピーは軽トラックの傍から離れないで見送っている。「チョッピーは蜂場には近づかない」と松永さん。何か嫌な目に遭ったことがあるのだろう。松永さんは右手に燻煙器、左手に餌にする砂糖水の入ったペットボトルを持っている。バーナーで消毒済みの空の巣箱を王台の出来ていた巣箱の横に並べて置くと直ちに作業開始だ。

 「蜂児の予備群が入っている奴(巣板)と餌(蜂蜜)が入っとるのとを合わせて、王台の出来ている枠を真ん中に入れ、それに給餌器に餌(砂糖水)を入れておくと完了ですね。蜂が元気な時には王を探したりはしないです。(蜂の様子が)おかしいなという時にはしっかり観るけど……。あんまりいじらない方が良いと思うね。頃合いがあるんでしょうね。それより、こっち(西表島)での心配は雨ですかね。(湿度が高くて)蜜の糖度が上がらないからね。(採蜜を)我慢すると糖度も上がるんですけど……」

 松永さんが行っている作業の一つ一つを説明してくれる。

 「苦蜜(にがみつ・沖縄本島の名護市付近で採れる苦みを感じる蜂蜜で、人気になっている)も偶(たま)にこっちも入りますね。夏(の蜜源)はサガリバナです。川があるんで、いっぱい咲きますよ。群数は少ないけど、少数精鋭で頑張っているんです。今の時期は木の花が山に咲くんですよ。明日から時化るから、何かのスイッチが入って、その後に咲くんじゃないかと思うんです。(蜜蜂が)蜜ばっか溜める時もあるんですよ。女王は居ても卵産まないで……。蜜を溜めているから卵を産む場所がないんですよ。その時には、何か変化を与える……蜜枠を取り出して採蜜をするなどして、(巣板に)スペースを空けてあげるなど変化を付けてやると、又、卵を産み始めますね」

 王台の出来ている巣板を核にした蜂を分ける作業は30分余で終わった。分けた巣箱を持ってニライナリゾートへ戻ると、松永さんは宿泊棟の下に設えてある木造デッキの隅に置いた。蜜蜂の行動半径は約2キロ。新しい群は元の群から2キロ以上離しておかないと、元の群に帰ってしまうのだ。デッキの周りには亜熱帯植物が茂り、木陰でキノボリトカゲが枝から枝へ渡り歩いている。ココナツヤシの幼木がデッキのすぐ前で葉を広げ、マンゴーが宿泊棟まで枝を伸ばしている。西表島では人間の住環境と亜熱帯の自然がせめぎ合っている。

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