2023年(令和5年2月)69号

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高校の時に初めて蜂を飼う

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 蜂場から戻って2tトラックを倉庫に納めると、藤岡さんは肩の力が抜けてホッとした表情を浮かべていた。

 「昔の蜂は冬の間、蜂球を作ってじっとしよったんよ。それで2月になれば奨励給餌というのをやりよったんよ。今の蜂は冬の間でも卵を産むけんね。蜂が変わってきとるんよ。やっぱり面白いのは採蜜やね。交配用の蜂も頼まれればやるけど、面白いもんじゃないね。請負で出した農家は年が変わったら、又、言うてくるけんね。50歳ごろまでは種蜂の問屋売りもやったけど、あんまりやりたい仕事じゃなかったね。うちら(蜂を)放ったらかしやから、今、餌をやらないかんけどね。秋にきちんとしとれば、今はまだ何もせんけんね」

 「高校の時に初めて蜂を飼い始めて、それから毎年、増やしてきたわな。他の仕事に就いたことはないね。かといって、親父の仕事の手伝いもせんかったで……。当時は、ここらでレンゲ蜜がドンドン採れよったで。トラクターが入って、田植機が入ってきたらレンゲは採れんようになってきたわね。それで愛媛へ行くようになったな。今でもひと所だけは行きよるけど、付き合いじゃね。10年ばい前までは、岡山県でフクラシバ(蜜)が採れる山全体が蜂の羽音で鳴りよったけんね。モチノキ科のソヨゴのことよな。ミカンが採れんようになったら、フクラシバも採れんようになってきたわな。最近はミカン蜜でもミカンの匂いがせんようになったのは、ミカンの花じゃないんじゃないか。流蜜もあんまりせんようになったしな。栗(蜜)がようけ入りよったな。黒くて、甘みの中に渋さがあるような蜜やったけど、今は全然採れんようになったね。それでも、それに替わる蜜が採れるようになったけん、わしらは生活できよるんじゃけどな。ハウス(でメロンを)作りよる人も高齢化で減りよるんじゃからね。蜂売る人も、これからはしんどう(大変に)なってきたね。昔はレンゲとミカンじゃったね。高知はレンゲが採れんようになってガタガタになったね。その時に、ぼくらは愛媛へ行きよったけんね。長いことやらしてもろた。もう蜂飼い始めて50年じゃけんね。高知に蜂屋さんも20数人おるけど、蜜採って生活できる人は少ないね。若い人はネットでお助けを見て、蜂を手入れしよるんじゃけん、それじゃでけんね」

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