2023年(令和5年2月)69号

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妻と息子を亡くす

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 風は冷たかったが暖かい日射しが降り注ぐ午後、緩やかに巣箱が並ぶ自宅屋敷内の蜂場をゆっくり歩きながら話を聞いた。足下には菜の花が満開だ。偶に手伝いに来ているという若い者という話は出るが、奥さんの話は出てこない。不思議に思っていたので、あえて尋ねた。

 「女房はアナフィラキシーで死んだんよ」。思いもよらなかった藤岡さんの返答に、言葉が詰まる。

 「クマバチじゃった。ブーンと飛んできて、毒液を散らしたんじゃ思うけど……、痛うはないけどイガイガすると言いよったけど……。間に合わんかったね、病院に。20分ばいくらいで(アドレナリンの)注射を打たないかんのよ。檮原(ゆすはら・町)へ行けと言いよったんじゃけど、息子が須崎(市)へ行くと言うけん、間に合わんぞと言いよったんじゃけど……。女は体質が変わるね。ずーっと一緒に蜂の仕事をしよったんじゃけど……。もう7回忌が済んだき、8年ばい前よね」

 さらに詳しく話を聞くことはできなかった。そこで「息子さんは今、どうされているんですか」と尋ねた。藤岡さんが遠くを見たまま答えた。「息子も死んだね」。

 

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