2023年(令和5年2月) 69号

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今は奨励給餌の時期やね

 自宅に帰り着くと、倉庫のシャッターを開け2tトラックの荷台に積んであったローリータンクに作り置きしてあった餌の砂糖水を確認し、動力噴霧器(動噴)に燃料を入れた。どうやら作業を変更して、蜂に餌を与えることにしたようだ。

 藤岡さんには通い慣れた集落内の細い急坂を2tトラックでも難なく上りきった。動噴のエンジンを掛けてタンクの砂糖水をトラック横の茂みに向けて噴射しながら、時折、藤岡さんが砂糖水に指を当てて舐めている。前回給餌をした後で洗浄した際の真水がホース内に残っているため砂糖水の濃度を確かめているのだ。

 準備が整うと蜂場の一番奥の巣箱から給餌を始めた。防寒のために蓋の下に入れてあるビニールシートを少しだけ捲って、給餌箱の縁ギリギリまで砂糖水を注入していく

 「今は奨励給餌の時期やね。蜂に春が来たことを知らせて活動を促すためよ。若い者に砂糖水作らせたら、こりゃ濃いな。出が悪い」

 藤岡さんは巣枠の上に被せてあるビニールシートを捲った時の一瞬の判断で、蜂の群勢が弱ければ給餌箱を巣板1枚分内側に移動させている。

 「餌を食べ始めたら巣箱内の温度が上がるから、そうすれば蜂が増え始めるからね。暖かければ王の翅を切ったり、マーキングしたりする仕事もせないけんのじゃけど、風が冷やいわ」

 藤岡さんが私に申し訳なさそうに言う。寒さが厳しく蜂の勢いはもう一つのため、ほとんどの巣箱で給餌箱を内側に移動させていたが、藤岡さんがちょっと弾んだ声を出す巣箱があった。

 「花粉を勢いよう食べよるやろ。これやったら採蜜に間に合うな。花粉やって飼いよるけんね。冬の間でも卵産みよるよ」

 見れば、巣枠の上に置いてあるプラスチック容器に入った花粉を沢山の蜂が群がって食べている。花粉を食べれば蜂は活気付いて産卵が促進されるのだ。今の時期は、こんな蜂群を増やしていかなければならないという訳だ。

 蜂場の3分の2ほど給餌が終わったところで「もう昼になったよ」と、藤岡さんがリモートでホースを巻きとっている。その時だ。巣門の前で数匹の蜜蜂が団子状態になって通常の様子ではないのを見付けた。どうやら1匹の蜂が数匹の蜂から攻撃されている。「盗蜂やね。他所の蜂が餌を盗りに来たのを、入って来んように番をしようのよ」。自然界には、まだ蜜源がないため、他の群の巣箱に溜めてある蜜を盗みに来たのだ。「1匹だけやったらええけど、そいつが戻って仲間を連れてきたら大ごとやけんね」と藤岡さん。平穏に見える蜂の世界でも、熾烈な闘いが繰り広げられているのを知った。

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