2023年(令和5年4月)70号

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蜂蜜はボーナスと考えろ

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 Cafe Beeでの話が一区切り付いた時、ゆかりさんが1階の店舗「蜂蜜専門店にしおか」を案内しながら説明する。平日の午後だというのに、ひっきりなしにお客がやってくる。

 「晩白柚の蜜は他になくて、野バラの蜜も他で売ってなくて、うちの蜂蜜は23種類あって種類の多さが特長なんですよ。これからはレンゲとミカン、百花が採れますね」

 千年さんは、まだまだ話し足りない様子で、養蜂について具体的な考え方を教えてもらった。

 「菜の花と桜を採るように蜜蜂の態勢を早く仕上げているんで、(餌として与えている砂糖水を止めて掃除蜜※を行う)一発目のタイミングが難しいです。蜂を育てるのは私たちの仕事ですけど、花が咲いてくれて、天気だけはどうすることもできない。レンゲの種を4トンくらい撒くんですよ。うちでモチノキを増やしているんですよ。ハゼは全滅してしまって、鹿か何かにやられて……。木の花の蜜が採れるのは何年か先ですけん、投資といえば投資ですけど。蜂蜜だけでは、なかなか計算でけんけん。採れない時は打撃が大きい。やっぱ、蜂を育ててリースや売り蜂で経費と利益を稼いで、蜂蜜はボーナスと考えろと息子たちに言っているんですよ。問屋さんから問い合わせがあっても、蜂蜜だけは缶に入れるまでは約束でけんと言っているんですよ」

※注 : 越冬中に餌として与えた砂糖水の混じった蜂蜜を取り除く作業で、この後に本格的な採蜜が始まる

 「10群から始めて35年間。今、うちでは1人1000箱は扱っていけるように作業しているんです。目標かも知れんけど、藤井の親方から学んできているやり方なんですよ。基本は交配用の蜂なんで、どうしても数は多くなりますよね。藤井の親方は自分ができたんで、絶対できるはずということらしいですよ。群数は聞かれても、いっぱいとしか答えられないですね。採蜜群だけで1400群ですかね」

 「ゆかりと2人で始めた当時は、イ草、米、ミカンの栽培、それにメロンとイチゴの交配用蜜蜂が500群と500群。採蜜は100群、それにマルハナバチもやっていたんで、それも含めて2人で1500群やっていたんで……。それに巣箱も作らんといかん、巣枠も作らんといかんでやってましたから」

 傍で聞いていたゆかりさんがひと言。「(巣箱や巣枠を)作るのも楽しかった。巣箱に貼る金網を切るのも楽しかったですもんね」。

 このひと言で、西岡養蜂園を始めた当時、千年さんとゆかりさん夫妻が抱いていた夢の大きさが伝わってくる。

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