2023年(令和5年4月)70号

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朝早く、プーンと蜂蜜の匂い

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 午前8時、二男の和輝(かずき)さん(26)と、入社して1年目の上村宏太(うえむら こうた)さん(23)が、事務所に併設された倉庫裏の蜂場で作業を開始していた。並べた巣箱に並行してカリンの幼木が植わっている。無農薬で栽培して果実を蜂蜜漬けにするのだ。

 和輝さんは両親と一緒に養蜂を始めて8年になる。現在では、現場責任者だ。

 「海を挟んだ天草の三角方面で越冬して、八代に持って帰った群が、八代のレンゲ採蜜のスタートになります。レンゲ採蜜は4月半ばからなんで、まだ早いんですけど、他の準備に追われる前にやっておきたいのです。熊本県内だけでもレンゲが40か所以上ありますから」

 和輝さんと上村さんが、それぞれのペースで越冬した群の蜂児の出来具合を確認すると、単箱を清掃済みの箱と入れ替え、その上に空巣(からす)を入れた継ぎ箱を載せていく。単箱には給餌箱を2つ入れて、なみなみと餌の砂糖水を満たしていく。

 ゆかりさんが面布を着けて様子を見に来ている。「店に来ていただくお客さんに、これを見せて、蜜蜂が体を使って寸法を測って、六角形の巣を作っているのをお話するんですよ」と、手に小さな円形のムダ巣を持っている。「採蜜の時に朝早く蜂場に行くと、まだ蜂は動いていないのにプーンと蜂蜜の匂いがしてくるんですよ。巣箱の中で蜂が翅を動かして蜜の水分を飛ばしているので、周りまで蜂蜜の匂いが漂ってくるんですよね。そういう時に、蜂を飼っている喜びを感じましたね。社長(千年さん)はジャンジャン前を向いて行くタイプで、私はずーっとコツコツするタイプなんで良いのかも知れませんね。会社が大きくなって、従業員を使うようになってみて、人を育てるというのも勉強になりましたね。弟子は育てられるけど、従業員は付いて来られないですね。養蜂の仕事は重労働ですもんね。涙が出るほど辛くても、巣箱を腰に乗せて運んで、降ろすこともできないほど疲労困憊していても、夜中に全部の巣箱を運び終わった後、大の字になって夜空を見上げると満天の星空で、辛さを忘れるほど感動しますね」

 そんな話を伺っていると緊急電話が入った。「孫が大泣きするけん」と、娘さんからの呼び出しだ。

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