自然が変わりよるんじゃろ
山側の蜂場でも採蜜期に間に合わせるため急ピッチで継ぎ箱を載せる作業が続く
翌日もレンゲ蜜を採るための準備作業が続いた。昨日までは有明海に近い平野部の蜂場だったが、この日、千年さんの軽トラックは高速道路の下を潜って山手へ向かった。農道を走りながら、両側のミカン山を見て「これ全部、晩白柚なんですよ。こんだけ晩白柚が植わっとるとこは他になかっですもん。そっで晩白柚の蜜はうちだけしかなかっですよ」と、千年さんは得意そうだ。蜂場の入口近くの罠に鹿が掛かり、ワイヤーがミカンを運ぶモノレールに絡んでもがいているが、どうすることもできない。
山の蜂場は竹林の茂みを入った広場で緩やかな斜面になっている。作業の内容は昨日と同じだ。ただ、この日は仕事量が多くなるため、新たな助っ人として中山幸法(なかやま ゆきのり)さん(31)が加わっている。
蜂場に着くと、一斉にそれぞれが作業に掛かる。単箱の蜂児の状態を確認し、単箱を、消毒してバーナーで焼き、クレゾールを塗った単箱に入れ替える。
次々と蜂児が羽化するこれからの時期はたっぷりと餌を与える
「中山、最初に巣板を上げた時に、どっちに卵が寄っとるか分かるやろ。一枚挿すとを考えろよ。抜くとは出蜂児ぞ」
千年さんが声を出して、今日、戦力として加わったばかりの中山さんに注意を促す。出蜂児とは、あと3日くらいで羽化する蜂児のことで、即戦力となる。全ての単箱に継ぎ箱を載せ終わると、その中の幾つかを選んで白い紙を蓋に挟んでいる。
「ここは蜜源が20箱の蜂場なんで、今、35箱置いてあるから移動する箱の目印」と、千年さんが説明してくれた。冬の間は餌を与えているので蜜源の量は関係ないが、これからは自分たちで蜜を採って群を維持しなければならない。生き延びていくためには蜜源の量と蜂数は密接な関係が出てくる。もう一つ、千年さんが教えてくれたのは、同じ蜂場の採蜜群は勢力を均等にしておかないと、採蜜の時に支障が出てくるというのだ。確かに、同じ蜂場の中でたっぷり蜜を溜めている群と溜まっていない群があれば、採蜜を決断する時期に支障が出てくるのは当然である。
「世話をせんでも、すぐに生まれてくる出蜂児を入れてやらんと……、間に合わんぞ」
強い群から出蜂児を抜いて、弱い群に入れてやることで、もう2週間後に迫っている採蜜の時には群勢を均等にしておかなければならないのだ。
蜜蜂が飛び交う中、古い巣箱を和輝さんが運ぶ
採蜜準備を終えていた菜の花畑に近い蜂場で千年さんが内検をする
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