蓋が開いて新王が顔を出した
見付けた王台は切り落とす
洋典さんは巣板の隅々まで丹念に見て、王台を見付けては包丁で切り落としていく。
「王台を見落としているのではないかと、不安になるんですよね。9個取り除いても1個残してしまったら何の意味もないですから」
内検を続けていくと、巣板の下方に4つの王台ができているのを発見した。1つはすでに蓋が開いて女王が誕生した後の状態で、2つは王台の中で女王蜂が黒くなって死んでいる。残った1つの王台が、今まさに蓋が開いて新王が生まれ出ようとしている。洋典さんが急いで王籠を準備すると、その直後にパカッと蓋が開いて新王が顔を出した。新女王蜂の誕生である。2番目の女王蜂の誕生をタイミング良く発見して、1群に2王にならなくて済んだという訳だ。後から生まれた新女王はたまたま無王になっていた群の中に王籠のまま入れられた。
後日の報告では、2日間そのまま置いてから確認すると、王籠の新王は働き蜂から餌をもらって生きていたので、「受け入れられたと思って、群の中に放しました」ということだった。偶然だったが、1件落着ということだ。
王台ができていれば分封させないために全て切り落とす
夕陽が山の端に沈み辺りが薄暗くなるまで内検を続けていた洋典さんが「ごめん、ごめん」と声に出して、急いで継ぎ箱の蓋を閉めている。「今の(蜂群)は怒り狂っていましたね。寒いし暗いし……」と、洋典さん。この日の内検は終了したが、明日、移動させる予定の継ぎ箱の巣門を閉じなければならない。巣門の前に小さな木片を釘で打ち付け、閉じる作業が終わったのは午後7時を過ぎていた。
王台から羽化したばかりの女王蜂
夕暮れまで内検が続く
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