2023年(令和5年4月)71号

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軽いね、全然溜めておりません

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一旦自宅に帰り昼食を済ませてから、戸根川の横にある田んぼの中の蜂場へ向かった。戸根川の堤防に続く桜並木の蜜を採るのが目的の蜂場だ。そのため3月20日に継ぎ箱を載せ、桜蜜が入り始める前には食べ終わるように、2月10日に始めた春宣言の給餌は100ccを4回で切り上げていた。

 「デマリー法という(蜂を)飼う技術の1つで、今年初めて10群やってみました。分封させないようにする方法ですね。分封をコントロールするということは収穫量を上げることに繋がりますから……。下の単箱に1枚だけ女王蜂のいる巣板を残して、他の巣板は継ぎ箱を積み上げた3段目に入れます。人口(蜂数)密度は低いけど3段になっているから蜂数は充分。ただ、3段目の継ぎ箱に蜂児巣板と一緒に入れた働き蜂は、女王が居なくなったと勘違いして変成王台を作りやすいので、1週間後に内検をして、できている王台は全部取ってしまいます。1段目に戻った働き蜂は単箱がスカスカなので、蜂は分封した気分になるので分封が起こることはないですね。ダニ駆除をして蜂の数が増えていて、自分たちで餌を採りに行けるので、給餌の量が段違いに少なくて済むようになるんです」

 継ぎ箱の巣板を持ち上げ、洋典さんが由香さんに伝えるように声に出す。

 「軽いね、全然溜めておりません」「新しいやり方が当たってないのか、今年の蜜が少ないのか。(蜜巣板を)全然盛ってないもんね」

 「分封した訳じゃないと思うけど」と洋典さんが分封を気にしている。すると、由香さん「私たち出て行きますって、何か置き手紙があったらいいのに……」と、小声で言う。

 内検を続けるうちに少し重たい蜜巣板があった。手に持たせてもらい「蜜が溜まっている」と由香さんの声は弾むが、洋典さんは浮かない顔だ。

 「全然と言うわけではないけど、ちょっとがっかりしたね。5月10日ごろの流蜜期に合わせてデマリー(法)をやれば良かったのかも知れないけど、ちょっと早かったかな。桜蜜を採ろうとしたことが間違っていたかな」

 洋典さんの頭の中は、今年初めて試したデマリー法が良かったのか、時期は大丈夫だったのか、様々な思いが交錯しているようだ。

 

 「桜の花から蜜が出るもんだと思っていましたから、早くから準備したけど蜜はさっぱりだったので、(以前からアドバイスを受けていた)俵養蜂場の俵さんに話したんですよ。そしたら『桜は花が終わってからも蜜が出るんだよ』と教えてくれて、花外蜜腺から甘露蜜が出るんだそうです。桜の新しい葉が出た時、光合成をする葉っぱを食べる虫の幼虫から守ってもらうためにアリを呼び寄せようと蜜を出しているんだそうですね。そこに蜂も行っているということなんです」

 堤防に桜並木が続く戸根川近くの田んぼに置いた継ぎ箱の内検は、期待していたほどの成果はなかった。帰り道、桜並木に軽トラックを停めて桜の花外蜜腺を確認していた洋典さんが呟く。「まだ蜜が出てないですね。デマリー法をやったのが早かったかな」。近年の気象は、年毎に大きく変動している。リスクの高い賭けだったのかも知れない。

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