えっ、会社辞めるの
冬に使う薪ストーブの薪を準備している
買った土地は20年間も放棄されていたミカン園。足を踏み入れることさえできない藪が茂る山になっていた。長崎勤務の間はレクリエーションのつもりで土曜と日曜日は開墾作業を続けた。しかし、3年後に次の転勤辞令。次の勤務地は東京本社だった。1年間は東京勤務を続けたが、東京暮らしに馴染めない。ゴルフ三昧だったロンドンでの暮らしが思い出される。ウィンブルドン選手権ではチケットのリセールを待っている間にイチゴを食べながらシャンペンを飲むのが楽しみだったし、ヘンリーレガッタの観戦も懐かしい。人事担当に聞くと、会社は自分たち世代を飛び超えて若返りを図っていると知り、腹が決まった。ついに洋典さんが由香さんに提案する。「長崎に住もうか」。その時の由香さんの反応は「えっ、会社辞めるの」と、好反応ではなかった。しかし、1週間か10日もするうち、由香さんも次第に「長崎に帰ろう」と変わっていったのだ。「農的暮らしさえできれば、ええと思っていましたから……」。その時、洋典さん52歳、由香さんは43歳。
道具置きハウスの前にヤブデマリの花、左後方に冬の間に燃す薪が積まれている
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