日本海側の雪の降る所にはトチがある
霧滝蜂場での採蜜の朝、淳也さんが水をポリタンクに準備する
翌朝、採蜜にしては遅めの集合時間、午前8時に国道312号沿いの辻井養蜂場の店舗に行く。長男の淳也(じゅんや)さん(43)が、軽トラックの荷台に積んだ遠心分離機の傍に並べたポリタンクに水を入れ終わると「ほな、行くでぇ」と、健一さんに声を掛けて先に出発した。
「今日の蜂場までは1時間半掛かりますよ。霧滝いうて、もうちょっと行ったら鳥取県という山の中ですから。トチの花は上を向いて咲いているので、一雨降ると花が傷んで、回復して次の花が咲くまでに3日掛かるんです」と健一さん。
天気予報は翌日から雨になっている。健一さんは採った蜜を溜めておく一斗缶が足らなくなるかも知れないと店舗近くの倉庫に立ち寄り、一斗缶を補充してから出発した。
健一さんの運転する軽ワゴン車の後ろに付いて走ること、約1時間半。国道9号線から別れて県道103号線を岸田川渓谷に沿って進むと、渓流対岸の杉林の中に巣箱が見えた。すでに遠心分離機は設置を終えて、淳也さんが巣箱から抜き出した蜜巣板を一輪車に乗せて運ぶ準備をしている。
すぐ側に沢が流れる霧滝蜂場は杉木立の中に巣箱が置いてある
健一さんが34群の巣箱が置かれた霧滝蜂場全体の状況を確認するように見回す。標高は約470メートルだ。
「だいたいスキー場があるような所にトチノキはあるんです。営林署がトチノキを伐った時期がありましてね。トチは30年しないと花は咲かないので、一回伐ったらもう私らは終わりなんです。現在は、伐採が止まっていますけどね。大山から北海道まで日本海側の雪の降る所にはトチがありますね。鳥取県の大山が南限です。トチノキは炭材に適さないことと、食糧になるトチの実が生るので残してあったので大木が残っているんです。去年はすごい花付きが良かったんで、今年は裏番。蜂屋の仕事は読みが外れないんで、今年はワクワクしないんです。みんな採れないんだから仕方ない」
道具を運んだ後、採蜜を始める前に 沢で手を洗う 節子さん
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