霧滝蜂場の蜂は温和しい
高校時代から仲良しの百合子さん(左)と節子さん
健一さんは面布も手袋も着けていない。百合子さんと節子さん、淳也さんも手袋は着けていない。1時間ほどしたら百合子さんは面布も外している。
「うちの蜂は温和しくて蜂蜜を多く集めてくる。そんな蜂の卵を受け継いで、自分ところの種として使っていますからね。カーニオラン種で蜂(の密度)をちょっと薄くしているんです。(分封の前兆となる)王台を作りやすいんですよ。分封するような勢いのある蜂で分封をさせないのが養蜂の技術ですからね。イチゴ(農家)から返ってきた(弱っている筈の)蜂が分封した群もありましたから……」
遠心分離機で搾った蜜を漉し器を通して一斗缶に入れる
健一さんが言うように霧滝蜂場の蜂は確かに温和しい。その背景には長い年月を掛けて蜂の品種を改良し維持してきた努力があったのだ。
蜜巣板を取り出して遠心分離機の傍へ運ぶ淳也さんの近くで、蜜を搾って戻ってきた巣板を元の継ぎ箱に入れている健一さんの作業を見ていると、微妙に巣板の前後を入れ替えている。
「継ぎ箱に巣板を戻す時に蜂児板と蜜巣板を交互に入れてやると、全体に蜜を溜めてくれるんです。それと今年から使い始めた巣枠と古い巣枠が混じっているんですけど、新しいのは巣枠の幅が狭いんでね、巣枠と巣枠の間(ビースペース)が広くなってしまうんで、古い巣枠と交互に入れることでビースペースを調整しとるんです。この間隔で蜜の入り方がずいぶん違いますからね」
最初に搾った蜜を健一さんが糖度計で測ると79度あった
巣板と巣板の間隔(ビースペース)は、わずか数ミリの差だが、蜜蜂の働きには大きな影響を与えているのだと知る。人間の目で作業するのではなく、小さな蜜蜂の目になって巣箱を見ることで蜜蜂が感じる空間のイメージを把握することができるのだ。養蜂の参考書によると、蜂にとっての1ミリは人間では35センチほどに当たるという。
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