2023年(令和5年6月) 72号

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リフトは使い出したら必需品

 国道312号線沿いに「国産はちみつ専門店 辻井養蜂場」の大きな立て看板。駐車場に車を停めると、大きな岩とケヤキの大木で自然感を表した植え込みが目に入った。その傍で辻井健一(つじい けんいち)さん(70)が手招きして私を呼ぶ。「蜂場を整備していたら岩が出てきたので、重機頼んで掘ってもらったら、その岩が氷山の一角。こんな大きな岩が出てきて……、勿体ないから運んでもらって、ここに置いたんです。国道沿いにこの店を出してから丸17年になるんかな。二男の雅也(まさや・34)が責任者なんですけどね。冬はカニを食べに来る温泉客が寄ってくれますね。でも、高速道路ができて売上げが2割落ちましたね」。

 瓶詰めの蜂蜜を並べた店舗でしばらく話を伺った後に案内された伊府(いぶ)蜂場で、健一さんの石に対するこだわりが半端ないことを知ることになった。

 「伊府蜂場は12年くらい前から土建屋さんに手伝ってもらって、少しずつ整備してきたんです。買った当時は、ここでレンゲ蜜が採れていたんですけどね。今は紫ヘアリーベッチの蜜を採りたいと計画し種を蒔いているんです。3町歩近くあるんですよ。ここらの見える範囲は全部買いましたから。年いったら重たい物を持つ蜂の仕事はできなくなりますけど、リフトがあればできますから……。息子2人がいなければ、ここまではしませんけどね」

 こう説明する健一さんの足下に蜂場を整備する際に掘り出した玄武岩が帯状に積み上げてある。目的があって置いてあるのではなさそうだ。健一さんは捨てるのが忍びないのである。好きなんだろうとは思うが、「石が好き」の気持ちを私には理解できない。

 ヒノキやスギの林の中をフォークリフトが縫うように走るために8の字を描いて砂利を敷き詰めた動線ができている。所々に木製パレットとプラスチックパレットが積み上げてある。蜜蜂群が北海道から戻ってきた時と積み出す時にフォークリフトが動きやすい蜂場の価値が発揮されるのだろう。「フォークリフトが豊岡市に4台、北海道中川郡に1台、計5台あるんでね。リフトは使い出したら必需品ですね。冬は冬で(雪掻き用の)バケットを付けとるんで……。人手を頼んで仕事をする手もありますけど、ここら辺では蜂の仕事は特別料金を払わんと来てくれやせんですけん」。健一さんのこだわりが伝わってくる。

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