2023年(令和5年6月) 72号

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均等な群を作るのが目的

 昼食後は、健一さんに同行して「蜂場を作るための自前の土地が欲しい」と、17年前に初めて購入した宿南(しゅくなみ)蜂場へ草刈りに行く。

 「ここはイチゴの交配から返ってきた群が置いてあるんです」と健一さん。周辺の水田より1段高く土盛りしてある宿南蜂場に入ると、15群ほどの巣箱の周りに栗や柿、サクランボ、梅、ユズなどの果樹が植えてある。周辺の水田は代掻きが始まっている。「宿南蜂場は公共事業で水田を埋めてもらって、果樹園として登録してあるんです。立木があると、女王蜂を作るのに適しているんです。女王蜂が交尾を終えて戻ってきた時に巣箱を間違えないですからね」

 健一さんは金属刃を取り換えたばかりの草刈り機を肩に掛け、「(蜂蜜の成分検査の時に)農薬(の成分)が出たらアウトですからね」と、宿南蜂場の周りに巡らせた電柵の周辺の草刈りを始めた。電柵の近くには紫ヘアリーベッチの花が咲いている。電柵に草花が触れると漏電するため、定期的な草刈りは必須だ。1時間ほどで草刈りを終え、休む間もなく巣箱の蓋を開けて、蜂児枠を別の巣箱に移動させている。

 「2週間か3週間後に始まる夏イチゴの交配に間に合うように、ほっといたら分封するような勢いのある群から蜂数の少ない群に(蜂児枠を)入れてやっているんです。弱いのを助けて強いのを弱めて、全体に均等な群を作るのが目的ですね。前もって印はしてあったんですけど、さっき草刈りしながら見た時に目星を付けておいたんでね。貸し出しまでに一回調整しておかないと、直前では間に合わないですから。返ってきた蜂の群勢は、貸し出した農家の人によって違いますよ。餌やって大事に使ってもらった群は勢いがありますね。夏イチゴはスキー場が従業員の夏の仕事を作るため、苗を北海道から取り寄せているんですけど、赤字だと言っておられたね」

 健一さんは草刈りをしながら、巣門から出入りする蜂の状態をきっちり観察していたのだ。すでに午後6時半を廻っている。空はまだ明るいが、手元は見えづらくなってきた。明日は、トチ蜜を採る予定である。

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