トチは蜜源が遠いので疲れる
花粉を採りに行って巣門の前で一休みする蜜蜂
巣門には、蜜蜂が頻繁に出入りしている。中には、体中に真っ赤な花粉を纏(まと)って戻ってくる蜂がいる。
「真っ赤な花粉がトチの花粉です。花蜜が吹いている時には、蜜採りに一所懸命だから花粉団子は付けてこないですね」と健一さんが教えてくれていると、一匹の蜂が巣門のちょっと手前で草の上に止まった。
「トチの時はこうやって途中で休むのが特徴ですね。それだけ流蜜が太いんかね、100%蜜を採ってきているんですよね。花が蜜を沢山吹くと(蜂が)腹一杯に蜜を溜めて飛んでくるのと、トチの場合は蜜源が遠いのとで、1日に何往復もすると、やっぱり疲れるんでしょうね。巣門の前で一休みしてトコトコ歩いて巣門に入る蜂も居ますからね。ほんとに良い時は上2段で(一斗缶)1本採れますね」
体中に赤い花粉を付けて戻ってきたのはトチの花蜜を採ってきた印だ
少し遅れて霧滝蜂場に到着した百合子さんが、継ぎ箱の上に継ぎ箱を重ねて3段になった巣箱の端を持ち上げて「これは重たい」と、嬉しそうに声を上げる。
淳也さんが継ぎ箱の2段目と3段目の蜜巣板を一輪車に乗せて遠心分離機の傍まで運ぶと、百合子さんが蜜蓋を切って遠心分離機にセットしてスイッチを入れる。節子さんは蜜巣板が遠心分離機の中で回転するのを覗き込んで「出とる、出とる」とニコニコ顔だ。遠心分離機の回転が止まると、節子さんが巣板を抜き取り雄蜂の蓋を切り、巣枠を掃除する。そうすると、蜜巣板を運んできた淳也さんが帰りにその巣枠を元の巣箱まで運んで納める。大きな採蜜の流れは、淳也さん、百合子さん、節子さんの流れだが、健一さんは百合子さんの蜜蓋切りが遅れると手伝い、遠心分離機で搾った蜜を漉し器に通して一斗缶に溜めるのが役割だ。
「うちは家族経営です。豊岡では女房の同級生の節ちゃんにも手伝ってもらって、4人で現場をやっています。採蜜は、天気がまず大事。花と蜂、全部が良い具合に合わないと採れないですから、採れる時に少々糖度が低くても採っておかないと駄目な商売なんです」
そう言って健一さんが遠心分離機で最初に搾った蜂蜜の糖度を測定すると、満悦顔で「79度」と教えてくれる。
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