2023年(令和5年7月) 73号

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女王蜂の居る群で人工王台

 翌朝は、午前8時過ぎに上平蜂場に全員が集合した。

 「王台が出来そうなのが26個。ただ給餌しないと無理そうですね」。巣箱から王台枠を次々と取り出し、仔細に点検してから裕一さんが私に言う。

 「ここの蜂場の巣箱には全部、女王蜂が居るんですよ。(多くの養蜂家は)女王が居ると人工王台を齧りにくると思い込んでいるようだけど、そんなことはないですね。女王蜂が居る状態で人工王台を作っていくのは、蜂児を他から持ってきてやり取りしなくて良いので楽なんですよ。女王蜂が卵を産み続けているので、次々と蜂児が生まれる状態の中で王台を作っていることになりますよね。それは群が順調に世代交代をしていることなので、ローヤルゼリーを運ぶ若い内勤蜂が多いということでもあって、特性としてローヤルゼリーを多く溜める群になっているんですね。つまり世代交代をしながら、次々とローヤルゼリーを採ることができますよね。それを狙って女王蜂の居る群で人工王台を作っているんです」

 どうやらそこが、裕一さん自慢のローヤルゼリー採集方法のポイントらしい。

 巣箱の列から少し離れた広場で、正さんとまゆみさんが向かい合って椅子に座り、裕一さんが巣箱から抜いた王台の付いた棒を前に積み上げて作業を始めている。まゆみさんがローヤルゼリーの溜まっている王椀の中から移虫して48時間の幼虫をピンセットで取り出している。正さんは次の移虫作業の準備として、ローヤルゼリーの溜まっていない王台を小さなヘラで掃除している。

 「私らは、移虫してから48時間の幼虫を取り出すんですけどね。数やる人は72時間なんですよね。でも、それをやると、もっと小さな幼虫を移虫しないと駄目なんですよ。目が良くないと出来ないんですよ。3日ごとにゼリーを採るんですよね。私らは2日ごとですけどね。10円玉の縁の細い線から出ないくらい小さな幼虫を移虫するんです」

 正さんが王台を掃除しながら話す。

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