健康食品として蜂蜜や花粉にこだわる
巣門の前に花粉団子を集める仕掛けを設置してある
午後3時半を過ぎていた。今にも降り出しそうな空模様だ。この日、豪さんが最後に行ったのはスペイン人のフルヤン サンレイさん(47)が経営する農園の一角に巣箱を並べた蜂場だった。
「ここの蜂場ではビーポーレン(花粉団子)を採っているんです。ビーポーレンには350種(※)以上のミネラルやビタミン、酵素などの栄養成分が含まれているためパーフェクトフードと言われていて、ヨーロッパではビーポーレンが一般的に売られているんですよ」(※:花粉団子に含まれる栄養成分の種類や数には諸説あります)
豪さんが巣門の前に仕掛けた花粉採り装置から底が金網になっている引き出しを抜くと、オレンジ色や黄色、焦げ茶色の花粉団子がこんもりと積み上がっている。
蜂が採って戻った花粉団子を集める
「これを35℃で3日間掛けて乾燥させます。巣箱によって花粉の色が違うので、群によって行っている花が違うというのが分かりますよね」
フルヤンさんの畑では、トマト、キュウリ、ナス、キウイ、ラズベリーなど無農薬で有機肥料の野菜や果物が少しずつ多品種栽培されている。この蜂場の蜜蜂は、これらの野菜の花粉を集めているのかも知れない。いや、花粉だけでなく花蜜も集めているのだろう。フルヤンさんの野菜畑を見ると、豪さんがダニ剤や抗生物質を使わないで蜜蜂を育て、美味しい健康食品としての蜂蜜や花粉にこだわる姿勢が重なって見えてきた。
フルヤンさんが豪さんに木の生長について説明をしている
冬はプロのスノーボーダー、春から秋の季節は養蜂家として仕事をする豪さんのライフスタイルは、新しい養蜂家の生き方を示唆している。7歳の時からスノーボードに親しみ、自然の中に身を置く心地よさを体の芯から知っている豪さんだからこそ、蜜蜂の羽音の変化にも敏感な養蜂家の素質を備えているのではと思えた。
フルヤンさんの農場の傍に栗の大木
豪さんが自宅台所でコーヒーを淹れようとしている
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