痛み止めをがぶ飲みで
蜜蓋を切りながら朱里さんと桂吾さんの会話が弾む
翌日は、アンテナ蜂場でやり残した「敗戦処理」作業を継続する予定だったが、急遽、昨日持ち帰った蜜巣板の採蜜をすることに変更になった。恐らくこの変更は、有り難いことに私の取材に配慮した結果だと思う。
大きな作業場の奥に遠心分離機が据え付けてあり、その傍に蜜巣板の蜜蓋を切る台が3台設置されている。桂吾さんと朱里さん、それに武さんの3人が同時進行で蜜蓋切りをするということなのだ。それぞれが巣箱から蜜巣板を取り出して蜜蓋切り台に置くと、左官が壁を塗る際に使うコテのような形をした刃物で蜜蓋を切っていく。3人の真ん中に湯が沸かしてあって、一作業ごとに蜜蓋切り刃を湯に入れて蜜が絡んで鈍くなった切れ味を戻している。3人共、蜜蓋切りが丁寧だ。小さな蜜蓋の屑も残さない。
遠心分離機から搾ったばかりの蜂蜜が流れ出る
きっちりした役割分担はなさそうだが、遠心分離機に蜜巣板を入れ、搾り終わったら取り出すのは朱里さんで、一斗缶に溜めた搾った蜂蜜を大きな貯蔵タンクに入れるのは桂吾さんの役目のようだ。
「去年の春に、蜂蜜で満杯の一斗缶を貯蔵タンクに入れようと持ち上げよったもんで、ヘルニアになってしもたもんで、それからクレーンを使うようにしたんです」
そう言えば、取材初日に「頸椎を傷めとって」と桂吾さんが言っていたのは、この事だったのか。
「ヘルニアで頸椎を圧迫して、去年8月から右手が痛くて痺れがあって……眠れないほど痛いもんだから、椅子にうつ伏せになって、首の骨を伸ばすように頭を下げとったら楽なんで、そうやってやり過ごして、痛み止めをがぶ飲みして右手を庇いよったら、今度は、左が痺れて感覚が無くなって、どうしても近々手術をせないかんのです」
真剣な表情で蜜蓋を切る桂吾さん
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