2023年(令和5年10月)75号

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養蜂家吉田桂吾を支えるもの

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 2日間、桂吾さんが「敗戦処理」作業をする傍に居らせてもらったが、桂吾さんの右手や左手の痺れや痛みを感じさせる場面に遭遇はしなかった。それだけ桂吾さんが痛みを我慢していたのか、痛み止めが効いていたのか分からないが、いずれにして、そこまでして蜂群を越冬させ、翌年の3月に始まるハウス交配から5月下旬のタマネギの交配までトータルで約600群に増群して、依頼会社の注文に間に合わせようとする桂吾さんの覚悟が、彼の頑張りの源となっているのは確かだ。「成りで始めた」「僕は一百姓なんで」と、少々自嘲気味に自らを表現する桂吾さんだが、亡くなった義父の名を自らの商標の冠に付けるとは驚きだった。義父能國さんへの敬意を形で表し、それを仕事への責任感とすることで、自らの頑張りを支えようとしているのは明らかだ。

 取材を終えた数日後、ヘルニアの手術を終えた頃に桂吾さんへ電話を入れてみた。

 「手術は上手くいきました。100%上手くいったんですが、僕は120%を期待していたんで……」と、少しばかり元気が無い。それに続けて「(1年4か月前)独りでやることになった頃の作業日誌を読んでみると、取材に来られた9月頭の頃は、もう3回(巣箱の)内検に廻っとりましたけど、今年は、これから2回目を廻らないかんのです。今年の秋か、来年の春は、交配用の蜂を(注文数まで増やせないだろうから)買い入れないといかんことになるでしょうね」

桂吾さんには、来年が試練の年になりそうだ。彼の誠実な仕事ぶりを見てきた者としては、ただ、「踏ん張れ」と心の中で声援を送ることしかできないもどかしさが募る。

 

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