2023年(令和5年10月) 75号

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越冬できるかどうか

 ハウスの交配から戻ってきた蜂群の内検は、桂吾さんと朱里さんの2人が作業をして、それを武さんが補佐する態勢だ。巣箱の蓋を開けると、桂吾さんと朱里さんが巣枠の上部に付着しているプロポリスや蜜ロウなどをハイブツールで削り取っていく。桂吾さんが巣箱の端に入れてある巣板を引き上げ、産み付けてある卵の有無や幼虫の状態を確認して、2、3枚の巣板を巣箱に残す。朱里さんが給餌箱に餌(砂糖水)を与えると作業は終わりだ。時折、桂吾さんが光に透かすように巣板を空にかざして、卵や蜂児の存在を確認している。朝日蜂場の巣箱の群は確かに蜂数が少なかった。桂吾さんは「(養蜂を)成りでやっているだけ」と言うが、巣箱に納められた巣枠を見ると、新しい巣枠に今年3月の日付と「桂」の焼き印が押してある。そこに桂吾さんの決意が伝わってくる。

 あまりに蜂数が少なく、「越冬できるかどうか分からんけど……」と呟く。桂吾さんも不安なのだ。

 作業を終えて朝日蜂場を引き上げる時、蜂場の一画に積み上げてあった空の巣箱の2段目と3段目の間を、桂吾さんが僅かにずらしている。

 「本来蜜の出る6月頃に蜜が出なくて、今ごろになって山の方で蜜が出ている感じなんです。蜜が巣板に残っているままでは仕舞うことができないんで、巣箱を少しずらして出入り口にして、そこから蜂が巣板の蜜を食べにくるようにしているんです」

 養蜂という仕事の原則は同じであっても、やり方には養蜂家個々の発想と蜜蜂への思いやりが違いとなって現れるのだと分かる。

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