ここらは吉田の姓が多い
桂吾さんがハウスから戻ってきた巣箱の内検を始めようとしている
吉田能國養蜂場の倉庫と作業場は、小径を挟んで相向かいに建っている。
「うちの父が色んな物をもらってくるのが好きな人だったんで、この作業場もそんな物が一杯で窓も見えない状態だったんですよ。親分肌で人の世話をよくする人でしたから、昨年11月の葬式には、ちょうどコロナ禍も落ち着いた頃だったので、沢山の弔問の方においでいただきました」
朱里さんが父親の思い出を話す。話の流れから判明したのだが、吉田能國さんは朱里さんの父親なのだった。能國さんは桂吾さんの父親と思い込んでいた。そういうことならば、2人の馴れ初めを聞かなければならない。
ハウスの交配から戻ってきて、しばらく置いてあった巣板に蜜が満杯に溜まっていた
「僕が結婚詐欺に遭いましてね」と、桂吾さんが話し始めた。いやいや、これは悪い冗談なのだったが、「2人は、幼稚園、小学校、中学校、ずっと一緒で、全校で100人いないような小さな学校だから、学年は違っても皆一緒ですよね。だから子どもの頃から知ってはいたけど、中学校を卒業してからは会うこともなかったんです。うちの自治会は太鼓台があるんで、毎年、秋祭りには太鼓台を出すんです。13、4年前の秋祭りに、これ(朱里さん)の兄貴の子が稚児さんに出るんで、叔母さんとして付き添いで来ていたんですよ。そこで、中学卒業して以来、久し振りに会ってね。どっちが先に声掛けたかは置いときますけど……、それから1年半ほどで結婚しました。ここらは吉田の姓が多いんですよ。僕もこれも、元々吉田の姓なんです」
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