2023年(令和5年10月) 75号

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ここらは吉田の姓が多い

 吉田能國養蜂場の倉庫と作業場は、小径を挟んで相向かいに建っている。

 「うちの父が色んな物をもらってくるのが好きな人だったんで、この作業場もそんな物が一杯で窓も見えない状態だったんですよ。親分肌で人の世話をよくする人でしたから、昨年11月の葬式には、ちょうどコロナ禍も落ち着いた頃だったので、沢山の弔問の方においでいただきました」

 朱里さんが父親の思い出を話す。話の流れから判明したのだが、吉田能國さんは朱里さんの父親なのだった。能國さんは桂吾さんの父親と思い込んでいた。そういうことならば、2人の馴れ初めを聞かなければならない。

 「僕が結婚詐欺に遭いましてね」と、桂吾さんが話し始めた。いやいや、これは悪い冗談なのだったが、「2人は、幼稚園、小学校、中学校、ずっと一緒で、全校で100人いないような小さな学校だから、学年は違っても皆一緒ですよね。だから子どもの頃から知ってはいたけど、中学校を卒業してからは会うこともなかったんです。うちの自治会は太鼓台があるんで、毎年、秋祭りには太鼓台を出すんです。13、4年前の秋祭りに、これ(朱里さん)の兄貴の子が稚児さんに出るんで、叔母さんとして付き添いで来ていたんですよ。そこで、中学卒業して以来、久し振りに会ってね。どっちが先に声掛けたかは置いときますけど……、それから1年半ほどで結婚しました。ここらは吉田の姓が多いんですよ。僕もこれも、元々吉田の姓なんです」

 

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