2023年(令和5年10月) 75号

発行所:株式会社 山田養蜂場  https://www.3838.com/    編集:ⓒリトルヘブン編集室

〒880-0804 宮崎県宮崎市宮田町8-7赤レンガ館2F

4

ここの蜂は2回もハウスに行っとる

 この日、午後からは「アンテナ」と呼ぶ蜂場の「敗戦処理」作業だった。基本的な作業内容は同じ、交配用に貸し出したハウスから戻ってきた蜂群の越冬準備である。継ぎ箱の蜜巣板を桂吾さんが取り出すと、タマネギの交配から戻ってきて、この日までの間に蜂が採ってきた蜜が巣房一杯に溜まっている。中には、桂吾さんが持ち上げただけで、ムダ巣が壊れて蜂蜜が滴り落ちる巣板もある。ほとんどが作業場に持ち帰って搾れる蜂蜜だ。

 午後5時過ぎ、一旦作業場に戻った桂吾さんたちは休む間もなく、曽保地区内に置いてある巣箱にスズメバチの捕獲器を取り付けに向かった。小高い丘の蜂場からはすぐ近くに瀬戸内海が見えている。

 「ここの蜂は、可哀想なことに、大根、ニンジン、ブロッコリーなどの種を採るために2回もハウスに行っとるんですよ。1回行って戻って来て、花の時期に元気になったら、又、ハウスに行ってもらったんですよ。香川に交配用の蜂屋が居ないんで、交配用に蜂を揃えることに集中せないかんのです。とにかく期限があるんで、それに合わせて数を揃えて持っていかないかんので……。3月はプロッコリーやニンジンとかで、5月24日のハウスタマネギまでトータルで600群弱。交配に出してから蜜を搾ることになるんで、6月末までは目が回るような忙しさですね」

 曽保地区内の蜂場2か所でスズメバチの捕獲器を取り付けが終わった時、すでに夕陽は瀬戸内海に沈もうとしていた。桂吾さんが声を掛けてくれる。「瀬戸内海を見渡せる所へ案内しましょう」。それから曽保地区の急な坂道をグングン上り、辿り着いたのが七宝連山の一画にあるハングライダー基地だった。夕陽はすでに島影の向こうに沈んでいたが、残照が輝く時間帯。桂吾さんの親切心が伝わってくる。

1
2
3
4
5
6

▶この記事に関するご意見ご感想をお聞かせ下さい

Supported by 山田養蜂場

 

Photography& Copyright:Akutagawa Jin

Design:Hagiwara Hironori

Proofreading:Hashiguchi Junichi

WebDesign:Pawanavi