2023年(令和5年12月)76号

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蜂を餓死させちゃいけないと

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 千葉で蜜蜂を越冬させるための拠点となっている市原市の自宅を訪ねた。一仕事を終えて寛いでいた竜馬さんに養蜂の仕事について聞いた。

 「(家族と)一緒に仕事を始めてちょうど2年経ちましたね、コロナ禍と重なった2年でしたけど……。4代目の自覚ですか、まだ現実味はありませんけど、(養蜂業は)悪くないと思っていますよ」

 傍で聞いていた祖父の利一郎さんが「他所で仕事をしてから、うちの仕事をしても良いかなと思うけど……、人間形成のためというかね。うちの人手も足りないから、まあ良いかなとも思うしね」。孫が一緒に仕事をする喜びをじんわり感じているといった表情だ。

 葉子さんが南部せんべいの耳をお茶請けに出してくれた。利一郎さんがお茶を飲みながら、思い出話を聞かせてくれる。

 「ここ(市原市)に来たのは平成8年からでしょう。以前、越冬していた館山市は(海が近いから)夜でも気温が下がんないから良かったのよ。それが、ここに来るようになって夜間の保温のために巣箱のカバーを作ったんですよ。風雨を凌いで湿気を逃がしてくれる材ということでテント材を使ったんです。今では商品化して売り出しているところもあるようだけど、作ったのは私が最初なんですよ」

 「養蜂業の収入が増えることは喜ばしいですね。昔と今では全然違うもん。百花蜜なんてね、昔は(一斗缶で)4000円でも要らないと言われたもん。背景を考えると、消費者庁というのができて、悪徳業者を取り締まったということで、需要と供給のバランスで国産の値が上がってますよね。昔は、千葉県にそんなに蜜源はないのに、千葉県産の蜜が大量に出回っていましたからね。国産は我々のように採っているのは間違いないからね。千葉で最初に採るのが桜。花が散り始めてから(蜜が)入るね。桜が終わったら、山形県のサクランボ、津軽のリンゴと続くけど、うちは百花蜜で出します。昭和43年にはもう菜種はなくなっていたんで、八戸に帰ってもすぐには蜜が入らねえからね。それで山形のサクランボの交配に出す時に、向こうで蜂を餓死させちゃいけないと思って、蜜を一杯にして交配に出したら、サクランボの蜜が入るもんだから、分封してしまうもんだから、(蜜を)採るよりしゃあねえと分離機を積んで、息子が仕事を始めたばっかりの頃、女房と3人で蜜搾りに(山形へ)行きましたよ。今は、そんなことはねえよ。どれ位蜜を持たせれば良いか、経験で分かってきたからね。だから蜂のことは蜂から聴けっていうの」

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