2023年(令和5年12月) 76号

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巣門が凍り付いて閉まらない

 4トントラックをバックして荷台を杉林の根元に置いてある巣箱の近くまで突っ込んでいく。停車すると、利憲さんがトラックの荷台に飛び乗り巣箱を積み込む準備を始めた。それと同時に、弟の憲二(けんじ)さん(53)と迷彩服姿の長男の竜馬(りょうま)さん(23)を始め、2か月前から平養蜂場の従業員として働き始めた利憲さんの同級生、川村真悦(かわむら しんいち)さん(54)と「巣箱を移動する時にだけ手伝いに来ている」と言う中村十見男(なかむら とみお)さん(78)が、薄らと雪の積もった蜂場に大股で歩いて入って行く。すると、間もなく憲二さんがワゴン車へトンカチを取りに戻って、巣箱の巣門辺りをトントンと軽く叩き始めた。「閉まんねえ」と呟く。移動させるために巣門を閉めようとしても、凍り付いていて閉まらないのだ。「一番外れの日を引いた」と、ぼやきながら竜馬さんが巣箱の上に薄く積もった雪を箒で払っている。継箱(2段巣箱)は前もってロープで縛ってあったので、トラックの荷台まで運べば、この朝の作業は終わる。誰もが、ただ黙々と巣箱を胸に抱え、あるいは腰に載せ背中で負うようにして運んでいる。

 午前7時40分、全ての巣箱を4トントラックに積み終わった。満載の巣箱を載せて、千葉県までの長距離を走らなければならないので利憲さんが入念にロープ掛けをする。傍らで見ていた竜馬さんへ、ロープが緩まないように掛ける技を実際にやらせてみて教えている。竜馬さんは平養蜂場で一緒に働き始めて、まだ2年経ったばかりである。

 一旦、事務所に戻って態勢を立て直すと千葉県市原市へ向けて出発だ。4トントラックは地元の運送会社、前もって巣箱を積み込んであった2トントラックは利憲さんが運転、ワゴン車には憲二さんと川村さんが乗り込み、乗用車には平養蜂場2代目の利一郎(りいちろう)さん(80)と妻の葉子(ようこ)さん、それと利一郎さんの孫になる竜馬さんが乗り込む。葉子さんがスーツケースを持って自宅玄関から出てきた。いよいよ出発だ。八戸自動車道から東北自動車道を走り、翌朝6時30分には市原市内にあるコンビニの広い駐車場に集合することになった。

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