2023年(令和5年12月) 76号

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巣箱にライオンって書いておく

 「毎年、越冬のために千葉へ行くね。最初の頃は千葉へ行くことが楽しくてね。上野まで汽車で何時間も掛かっていたからね。独身の時は正月でも帰って来ねえ時もあった。雪もねえしな。この辺の人に羨ましがられた訳さ。13年前の夏に頸椎と脊椎間狭窄症の手術をして重いものは持てなくなったけど、千葉行きを休んだことは一度もないね。車は運転できるからね。今は蜂場に車が直で入れるようになっているから楽だけど、昔は重い巣箱を担いで運んでたんだから……。越冬地は平成8(1996)年から市原市、それまでは館山市。最初は餌のやり方を聞いてね、100箱といっても2トン車に積んで行って、初めの頃は(蜂の世話を)やんなきゃならねえからやっていたけど、やっぱり(蜂が)可愛いんだべな。蜂が怖いというのは意識してなかったね。思うようにいかないと、この野郎と思うことはありますよね、100群あっても『こんにゃろう』というのは1群いるかいないかだよ。荒い蜂は血統だね。巣箱にライオンって書いておくんだ。採蜜は荒い蜂の方が良いね。蜂を扱うのは(燻煙器の)煙しかないから……。予想より蜜が採れないとか、値段が安いとかというのもあって、ローヤルゼリーで蜂屋を繫いだ時期もあるね。(蜂蜜の値段が)最低の時は一斗缶2000円を切った時もあったよ。ローヤルゼリーを昭和42(1967)年から始めて、ずーっとやっていた。うちで売るくらいの量ね。ローヤルゼリーは収量が安定するからね、それでやっていけるんだよ。養蜂家というのは花がなければ成り立たない仕事。必ず花がある所へ廻らなければならないんだもん。これは、良いね。蜂は目には見えない花粉交配という仕事をやってんだよね。それに家畜というのは、牛でも豚でも人間が命を貰っているでしょ。蜜蜂は命を貰っている訳ではないのが良いよね」

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