一人でやるのなら、やれ
陽が注ぎ始めると気温も上がり、赤や黄色の花粉団子を脚に付けた蜂が次々と巣箱に戻って来る
そんな勢いの良い義父の話を、巣枠を組み立てながら横で聞いていた孝徳さんが、手伝いではなく自らで養蜂を始めることになる経緯を語る。
「以前はスーパーの魚屋やったんです。スーパーが休みのたんびに『採蜜やから手伝って』と駆り出されて……。僕のスーパーの仕事は火曜と金曜が休みだったんだけど、火曜に手伝いに行って水曜と木曜日に仕事したら、又、金曜日に『採蜜だ』と呼び出されて、僕は全然休みがなくて、子どもらと遊びに行くことも出来ずにヘロヘロになってました。27歳の時から採蜜のお手伝いに行き始めて、それから2年ほどしてスーパーの魚屋をやめて、義父と一緒に内検にも行くようになって、養蜂の一歩を踏み出したんです。蜂の仕事を手伝いながら7年間くらいは他の仕事もやっていたんですけど、義父が本来の仕事が忙しくなり、次第に養蜂の考え方が一致しない面も出てきて『一人でやるのなら、やれ』と義父は養蜂から手を引いて、3年前から一人でやることになったんです」
ドンゴロスの破片が巣門の前に溜まっていた群の様子を仔細に観察する
孝徳さんが養蜂を始めることになった頃の話を聞いていた髙野さんが横から一言。
「いつ挫折するんか思うたら、なかなか挫折せんからな」と、褒めているのか茶化しているのか、微妙な心の動きが伝わる。
越冬後に内検をすると一番端の巣板まで蜂が溢れていた
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