まだ入るぞ、まだ入るぞ
画面中央近くに女王蜂
孝徳さんが養蜂を始めたのは、妻の亜紗美(あさみ)さん(39)の父親、髙野敏彦(たかの としひこ)さん(67)の影響だ。「森のくまさん」の店舗近くに自宅があるというので、さっそく話を伺うため、髙野さんに店舗まで来て貰った。
「私が50歳手前の頃やったろな。クリーニング業をやっていたんですが、私の姉の親戚が養蜂を共同経営でやっておって、梅畑で交配しよる時に『1日1万円出すから手伝え』と言われて行ったら、ネットは被っとったんやけど、『振れ』と言われて足下に蜂を振ったら、刺される刺される。それでも一か月に2、3回は手伝いに行ってたんやけど、1年後には他の従業員が皆辞めてしもて、自分だけになってしもて……。毎日のように行くようになって、そのうち共同経営の方がおかしくなってしまって姉の親戚が養蜂を止めたんですよ。蜂だけが残ってしもうて、可哀想だから私が時々世話しよったんやけど、以前に搾った蜂蜜が一斗缶に残っとったから、それを売ったら売れたもんやから、道具は残っとったんでその気になったんやけど、その時にはもう蜂がいなくなってしまって、岐阜県から新しく15群ぐらい蜂を買って始めたんです。
髙野敏彦さんが養蜂を始めた当時の思い出を語る
自分でやるのは初めてやったもんで、石川県の養蜂組合があって親しくなった養蜂家に聞きながら勉強して、この頃から採蜜の時は母親、姉、娘婿(孝徳さん)を巻き込んでやるようになったんやな。特にトチ(蜜の採集)の時はすごかった。搾っても搾っても、あっと言う間に(蜜が)入ってしまう。標高が600mから800mの所に蜂場があったのがちょうど良かった。標高が1000m級の高い所は糖度が上がってこないで、花は咲いても蜜は採れんという妙なことになってしまいよった。その年は梅雨が来ないというような天候で、まだ入るぞ、まだ入るぞと、すごかった。どんだけ入るんやろと言うぐらいやった」
組み立て途中の巣枠が店内に重ねて置かれてあった
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