2024年(令和6年4月) 77号

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蜜蓋が蜜巣板の全面にできた

 この日、巣箱の蓋を開けるのも躊躇させる低い気温だったため、浜佐美蜂場で山桜の蜜を採った後、採蜜群を移動させる予定の蜂場へ案内して貰うことになった。再び、軽トラの助手席に乗せてもらって石川県県民の森がある方角へ向かう。山間部へ入ると、さすがに道路に雪はないが、運転席から見えるのは雪景色だ。

 「小松市の新保(しんぼ)という山間部で、安定して蜜が採れている蜂場なんです」と、孝徳さんが説明しているうちに、蜂場に到着した。「熊が出没しています。ご注意ください」と書かれた看板の半分が雪に埋もれている。入口のロープを外して、蜂場の中に軽トラを乗り入れる。一面の雪景色だ。雪の中に積み上げてあったコンクリートブロックが崩れ落ちている。「猪が来ていますね」と孝徳さん。かなり広い。広さがテニスコート3枚か4枚分ほどもある蜂場は、以前は田んぼだったが放棄されて雑木林になっていた所を髙野さんが一人で開墾したのだと、孝徳さんが信じられないという面持ちで教えてくれた。道路に近く、山に囲まれているのに平坦で利便性の良い蜂場だ。

 「越冬した蜂が60群ほどいますけど、採蜜期までには新王ができて、夏の最後の採蜜には採蜜群が80群にはなるでしょうね。できれば150群まで増やしたいですね。蜂場の中に立っている木はクルミです。4月末くらいに花が咲きますよ。蜂は山の向こうまで蜜採りに行っているんで、去年80群になった時でも、しっかり蜜を持って来とったんで……、まだまだいけるんです。ここはカラスザンショの蜜が滅茶苦茶入るんです。蜜蜂が採ってきた花蜜を巣房に溜めて、翅で扇いで水分を飛ばして糖度を上げるんですけどね。糖度が78度以上になると、蜂が巣房に蜜蓋をするんです。カラスザンショの最盛期には蜜蓋が蜜巣板の全面にできた状態になるんです。これ以上はない完熟蜂蜜ですよね。山の蜜は温度差もあるんで蜜も湧くし、風は吹かないんで蜂が飛ぶコンディションが良いんで、ゴールデンウィークの頃はとんでもない数の蜂が飛んでいますよ。羽音もすごい。今、葉っぱのない木は皆、花が咲きますから……。浜佐美蜂場でアカシアを採った後で、もう一度ここに移動して山のアカシアを採りますけど、その後でも、まだ6月7月8月と3回くらいは採蜜できるんです。糖度が上がらないんで一か月くらいは間を置くんですけど、8月の採蜜の時は盗蜂(周りに花がなくなるため蜂蜜を盗りにくる蜂)が多くなるんで、遠心分離機の中に蜂が飛び込んで死んでしまいますし、蜜にもよろしくない。蜂を死なしてしまうのも嫌なので、去年の夏は浜佐美の蜂場まで蜜巣板を運んで、搾ってから巣板を山の蜂場に戻すようにして採蜜をやりましたね」

 この日は気温が上がらないままで、巣箱の蓋を開けることもできずに終わってしまった。

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