2024年(令和6年6月)78号

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タンポポの上だったら大丈夫

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 事前に教えてもらった自宅の住所近くまで行き、コンビニの駐車場から干場英弘(ほしば ひでひろ)さん(77)の携帯電話に連絡する。待ち構えていたように電話はすぐ繋がった。「今、どこからですか。えっ、コンビニ。そこに居てください、私が今すぐに、そちらに行きますから……」。電話は繋がったままだ。「……、私が見えますか。今、野原を歩いて、そちらに向かっていますよ。私が見えますか……」。

 驚いて辺りを見回すと、道路を挟んだ向こう側から携帯電話を左耳に当てたまま、急ぎ足で野原を横切って歩く男性の姿が確認できた。その誠実そうな姿に、よし、今回の取材は上手くいくぞ、という安心感が私の胸に湧いてきた。

 干場さんの自宅は道路沿いに広がる野原の奥に見えるが、車では道路を迂回して行かなければならない。干場さんに助手席に乗ってもらい、道案内をお願いした。コの字を描くように迂回し、辿り着いたのは先ほどの野原だ。

 「この野原に車を停めてください。ああっ、もう少し先へ行ってください。クローバーの花を避けてタンポポの上だったら大丈夫です」

 無造作に車を乗り入れようとした私に注意を促す干場さんの言葉で、放置された広場だと思っていた野原は干場さんが管理している花畑なのだと気付いた。確かに、隣接する空き地はカヤのような硬い細葉で背の高い植物が茂っているが、干場さん宅の前はクローバーやタンポポだけでなくヤグルマギクやダイコンなど小さな花が自然な感じで群れている。干場さんの細やかな手入れによって自然な雰囲気を醸し出す花畑となっているのだ。

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