2024年(令和6年6月)78号

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干場さん自宅前に広がる花園は草花が自然の姿を見せている

干場さんの自宅前に広がる広場は草花が自然のままの姿を見せている

 放置された空き地と見えた干場英弘さん宅前の野原を仔細に見てみようと思った。決して農家が畝を立てて野菜を作る畑や花色の配置や立体感を演出した花壇ように整備された花園ではないが、小さな植物が何気なく群れて花を咲かせていて自然感満載である。最も目立つ花はダイコン。小さな白い蝶の群が空へ飛ぶように細い緑色の茎に支えられた白花が、上空へ向かっている。白い花弁の先が薄い紫に色付き、化粧を施すことで花であると主張しているかのようだ。その根元付近には握り拳ほどの小石が曲線を描いて並べられ、その内側に移植ゴテか鍬かで土を耕した痕跡もある。干場さんの意識としては畑なのかも知れない。否、妻の恵美子さんの担当なのか。その耕した土に差し込んだ枯れ枝に「早どりミニ白菜」の種袋が被せてあるのを見ると、一応収穫の期待はしているようだ。並べられた不揃いの小石の節目に小さな植木鉢が間隔を空けて2つ置いてあるが、どちらもゴルフボール大の石が詰まっていて植木鉢の用は為していない。その周辺に拳ほどの小石やシートの切れ端などが無造作に、しかし、区切りを整えようとする意志は感じさせて置かれてある。人手の気配を感じさせるのはダイコンの根元のこの一角だけだ。

 タンポポの綿毛が、今にも飛び立ちそうに柔らかな球になっている。綿毛がすでに飛び立ち花芯だけになったものも辺りに見ることができる。綿毛の周辺には淡いピンク色のアカバナユウゲショウや黄色い花を付けたタンポポも見える。タンポポはある程度の期間に次々と花を付けるのか、それともタンポポの種類が違うのか分からないが、タンポポの群生する野原には身を委ねて寝転びたいような親しみが感じられる。調べてみると、日本にはカンサイタンポポやカントウタンポポ、エゾタンポポ、シロバナタンポポなど数十種類ものタンポポが確認されているそうだが、私には皆同じに見えてしまうので困ったものだ。以前の話だが、タンポポと同じような黄色い花を咲かせるオオジシバリという植物をタンポポと間違えて原稿を書き恥ずかしい思いをしたことがあるのを思い出した。

クリムソンクローバーの花蜜を採りに来ている蜜蜂

クローバーの花蜜を採りに来た蜜蜂

 タンポポと同じほどの広さで群生しているのがクローバーだ。クローバーも沢山の種類があるようだがシロツメクサと和名で呼ばれるクローバーが一般的だ。この野原でもほとんどがシロツメクサのようだが、花の盛りは少し過ぎている。しかし、良く観察していると、どこからか羽音がして蜜蜂がシロツメクサに取りすがり吸蜜している。干場さんの自宅では蜜蜂の飼育はしていないとのことなので、ここから約2キロ圏内に蜜蜂の巣があるのは確かだ。最初に私が車を乗り入れようとした時、干場さんが「クローバーの花を避けてタンポポの上だったら大丈夫」と注意を促したのは、これらの蜜蜂のためだったのだ。

 シロツメクサが群生している傍らに明るい小豆色をしたトンガリ帽子の花の一群がある。干場さんがクリムソンクローバー(ストロベリーキャンドル)だと教えてくれた。この花にも蜜蜂が吸蜜に来ている。名前で分かるように、この花もクローバーの一品種である。クリムソンクローバーは干場さんが蜜源植物として意図的に種を蒔いたのかも知れない。この他にも足下に、ヤグルマギクが青紫色の花を咲かせているし、アップルミントの肉厚の葉が緑色の柔らかい絨毯を構成している。その上、ムラサキツユクサが花を付け、シュンギク(春菊)までも花を咲かせている。干場さんの人柄がそのまま滲み出ているような自由奔放な花園だ。

 干場さんと一緒になって蜜蜂の写真を撮影していた時、「色々な生物が生きられる場所がないといけないと思っているんですよ」と話していたのを思い出した。この自由奔放な花園は、干場さんの自然感を表現した作品なのだと思い至る。

大根の花の周りは小石が並べられて、少しは畑の気配がある

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