2024年(令和6年6月) 78号

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時差式ダニトラップが非常に有効

 干場さんの話題はダニトラップに移った。「ダニを制する者は養蜂を制する」という言葉が養蜂業界の誰もの身に覚えがあるほど、養蜂家にとってダニは大敵である。そのダニ(ミツバチヘギイタダニ)を制する方法としてダニトラップがあることは良く知られているが、干場さんは時差式ダニトラップが有効だと教えてくれた。

 「育児圏の巣板の上部2分の1を残して、巣礎の下を半分だけ切り取って巣箱に収めてしばらくすると、切り取った巣礎の空間に働き蜂がムダ巣を作ります。その時のムダ巣は雄蜂が生まれる口径の大きい巣房が出来る確立が高いので、そこには雄蜂の幼虫が出来ますよね。雄蜂の幼虫が蛹になる前に蓋が掛けられますけど、その直前にダニが巣房に潜り込んで雄蜂の幼虫に産卵するんです。ダニは特に雄蜂を好んで巣房に侵入しますからね。雄蜂の幼虫から蛹になって羽化するまでの期間が働き蜂と比べて3日間長いので、多くのダニが育つんですよね。幼虫が蛹になる時に『蓋を掛けてくれ』というフェロモンを出します。そのフェロモンに誘われて蓋を掛けにいく働き蜂にダニが付いていて、雄蜂の幼虫の巣房に潜り込むんです。ダニトラップという意味は、ムダ巣に産み付けられた雄蜂の幼虫が羽化する前の巣房を切り取って、幼虫に取り付いたダニを一網打尽にしようということなんです。巣板の下半分の空間をさらに左右半分ずつに時間差で卵を産ませるようにすると、常にダニトラップとしての効果がありますから、時差式ダニトラップが非常に有効なんです。ダニ退治は8月がポイントですね。無蜂児状態でダニ剤(アピスタンやアピバールなどの駆除剤)を使うのは効果的です。可能な限りダニを少なくしてウィンタービー(越冬する蜂群)の生産に入ることができれば越冬の間のダニの被害は最小限に抑えられるし、来春の立ち上がりも早くなりますからね。1000群の蜜蜂を飼っている大手の養蜂場に、この時差式ダニトラップを実験的にやってもらったら、とても効果があったのが良かったです。協力していただいた蜂場には、ほんとに感謝でしたね」

 養蜂技術の知識を一気に聞かせてもらいパンク状態の頭で玄関を出ると、外はもう夕闇が迫る時間だった。この日、干場さんに出会ってから一枚の写真も撮っていないことに気付き、私を見送りに出てこられた干場さんの活き活きとした表情が魅力的で、慌ててレンズを向けた。

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