自然の恵みに寄り添う
ニセアカシアの花を手に嬉しそうな籏福さん
翌朝、採蜜工場に行くと、前日は居なかった和田保(わだ たもつ)さん(70)が遠心分離機を担当していた。責任者の金子さんが「彼、ゴルフが上手なんですよ」と、自分事のように得意げに紹介する。もう一人、個性派スタッフが増えた。確かに、周さんが言うようにスタッフが高齢化しているのは否めないが、年間の繁忙期と閑散期の落差が大きいとか、年毎の自然の変化に対応しなければならない養蜂業という仕事の特性を考えると、個性豊かで気心の知れたスタッフがローテーションで働く組織は「柔よく剛を制す」のことわざがあるように、効率的で継続性を支えているように思えた。
小林養蜂園で働く人たちを見ていると、静かでゆったりと仕事をしていて、誰もが何かに追われているような感じはしない。自然の恵みに寄り添う養蜂業だからなのか、社長である豊さんの経営理念なのか、わずか2、3日の取材ではあったが、小林養蜂園という組織体が醸し出す雰囲気は意外と本質を現しているのではないだろうか。
豊さんが初代の市郎さんから経営を受け継いで8年。6年前に店舗を建て替え、採蜜工場は半年前に新築したばかり。先の見えないコロナ禍を乗り切った直後だ。豊さんが小林養蜂園を経営する理念「環境に優しく自然に近く」の覚悟が伝わってくる。
籏福美紀さんが内検を終えて継ぎ箱を載せる
小林周さんが巣房の底にある卵を真剣な目で確認する
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