2024年(令和6年7月) 79号

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点でなくて面で採る

 豊さんは、ここまで話をすると、ニセアカシアの花が近隣のあちこちに咲き誇っているというのに、私の反応が鈍いことに気付いたのか「近所を少し案内しましょう」と、思い立ったように店舗の外へ私を導く。店舗のすぐ裏から片品川の川面に向かって階段状の深い谷になっている典型的な河岸段丘地形。その最も高い地点を国道120号線は走っているのだ。店舗に入る時には気付かなかったが、駐車場の周囲を取り囲むようにニセアカシアの大木が白い花の房を垂らしている。

 「私、60歳まで地元の銀行に勤めていて、定年退職して親の仕事を継いだんですよ」と、採蜜工場へ案内された時にボソッと教えてくれた。

 小林養蜂園では蜂場での現場採蜜はしていない。店舗のすぐ近くにある採蜜工場でそれぞれの蜂場から集めてくる蜜巣板の蜜を一括して搾っているのだ。採蜜工場には遠心分離機が2台設置されていて、天井から分厚いビニールシートが下げられている。外気が作業場へ直接流れ込まないように工夫されているのだ。入口とビニールシートの間に、群馬県内の各地の蜂場から運び込まれた蜜巣板を収納した継ぎ箱が3段か4段ずつ積まれていて、日付と蜂場名、花蜜の種類、箱数、担当者名を書いた伝票が蓋に挟んである。

 「現在、蜂場は100か所位あるんじゃないですか。以前は20か30か所だったと思いますけど……。それも5年前から異常気象になったための対策ですよね。点でなくて面で採るへの変更です。軽トラに載るのが9箱、だから置くのも9箱単位なんですよ。移動が大変なんで本当はやりたくないんですけど、仕方ないですね。採蜜工場の奥の部屋は蜂蜜の越冬倉庫になっているんです、冬場も冷房にしてありましてね。冬でも温暖化で冷房装置がないと日中の温度が上がり過ぎるようになったんですよ。気温が乱高下することが問題なんです。室温が7℃より上がると、越冬倉庫に置いてある蜂が騒ぎ始めるので、蜂の消耗を抑えるためなんです。以前は単なる倉庫だったんですけど、異常気象に対応するため冬も夏も冷房、それに環境に優しく自然に近くと木造にこだわって半年前に建て替えたばかりなんです」

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