蜂が違うと初めて知った
簗場さんの養蜂は基本的に越冬までは巣箱4段で飼う
翌日は、盛岡市の乙部養蜂場の君塚忠彦さん(66・「羽音に聴く」30号で既報)宅に養蜂仲間が集まって、移虫作業をすることになっていた。簗場さんは君塚さんの指導を受けて蜂の世話をしていると言うが、そもそもどうして簗場さんは君塚さんと出会ったのだろうか。
「養蜂組合の集まりの時に、たまたま君塚さんが隣の席に座って『遠心分離機なんだよね』と言ってきたんですよね。恐らく私が、それまでに幾つかの養蜂場から頼まれて噴霧器を改良したり、遠心分離機を修理していたので、噂で『簗場は、こういうのも直せるんだよ』って誰からか聞かれていたのだと思うけど、儲けようなんて思ってないからさ、安くで機械を修理して……。御礼にトウモロコシ、メロン、芋、タラバガニ、養蜂の資料などを頂いて……。喜んで貰って、こっちも得している。面白い。喜んで貰えて良かったな。現役の時の技術が役立っているんですよ。ICの交換も設計もやっていたから、マイクロコンピューターって電源入れた途端にものすごいスピードで反応しますよね。オシロスコープも買ってあるし、電気は見えねえから……。蜂は12月で終わりだから、12月と1月、2月中旬までの間は機械修理します。蜂も面白いし、機械、電気の修理も面白い。それで君塚さんから頼まれた遠心分離機を修理して返したら、君塚さんの奥さんが『新品になって返ってきた』と喜んでくれたらしいよ。
遠心分離機の蜜の排出パイプのコックは簗場さんの自作
その御礼にと、蜂を一群貰ったんですよ。それがゴールデン種との初めての出会い。なんだこれはとびっくりして……、蜂が違うというのを初めて知ったんです。それで君塚さんに教わって系統繁殖で増やそうとして変成王台を作らせて、今では、ほぼ全群がゴールデン種になっています。それに、今では蜂の飼い方も『こうやるんだよ』と君塚さんに教わっているし、明日は移虫の仕方も教わるし、機械の修理をしていて良かったな。明日は10人くらい集まるんじゃないかな。楽しいよ。何が楽しいかと言えば、良い系統を移虫して……人工王台を20個は準備したので、80%くらいは成功すると思うけど、良い仲間と一緒になって、どんな蜂に育つだろうかと想像する。そういうのが楽しみなんです」
「巣箱は4段にした方が蜂蜜は美味しいと思うんです。最初、蜂は蜜を1段か2段に溜めるでしょうから、上に持っていった蜂蜜は蜂たちの手が掛かっている訳ですよね。何をやっているか分かんないけど……。日中、キラキラした蜜が入っているのが分かっているけど、3段4段の巣板を見ると、みんな頭を巣房に突っ込んで何かやっている。ジーッと動かないからね。何やっているのか分からないけどね。蜜を搾る時は、蜂の手が掛かっている3段と4段の蜜巣板だけしか搾らないんです」
結局、取材一日目は、一枚の写真も撮らないまま簗場さんの話を聞き続けた。
全面に蜜蓋が掛かった蜜巣板。越冬の餌となる
ゴールデン種との混血の女王蜂
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