ギッチギチの満群の巣箱
蜜の溜まった巣箱を4段まで持ち上げるのは力仕事。持ちやすくなる道具を作った
蜂場の中には太陽をさえぎる樹木がないため、簗場さんは、引っ張ればすぐに移動できる簡易式テントを張って、その下で作業をしている。「テントを使い始めたのは最近ですよ。すごく気持ちがいいです」と快適そうだ。
「居ればいいな」と呟いて、巣箱の蓋を開ける。君塚さんから貰ったゴールデン種の女王蜂が居る群だ。「『王台ができたから』といって君塚さんから貰ってきたんですが、女王蜂の居ない群があったので、それと合同したんです。巣板の真ん中辺りに蜜がないでしょ。新しい女王を受け入れようとして、巣板の真ん中辺りに卵を産ませようとしているんですね。これは合同が上手くいっていますね」
内検をしている巣板を覗き込む
4段になっている巣箱の4段と3段目は、基本的に蜜巣板の巣箱なので先に脇に降ろしておいて、女王蜂の存在を確認したり、産卵の状態を確認するのは、1段目と2段目になる。4段群にすることは内検の際に重労働を強いられることに繋がっている。ましてや簗場さんの場合は、トチとアカシアの採蜜が終わった後で蜂が集めてきた蜜はそのまま溜まっているのだから、3段と4段は非常に重い継ぎ箱になっている筈なのだ。
「前回の内検で、この群は新女王を見たんですよ」と、簗場さんが女王蜂を探す。「蜂数も少ないな」と呟く。「飛んで行ったかも知れないな」と、分封した可能性もありそうな口ぶりだ。一群、一群の内検を終える直前に簗場さんはBee Keep-Cと呼ぶ有機酸発酵食品の水溶液を巣枠の上から噴霧している。「蜂児が居る所だけにBKCを掛けているので、1段目と2段目だけですね。電解水よりこっちの方が良いです。蜂の腸内環境が良くなってダニにも効くそうですよ」と簗場さんが説明する。その後で「ビショビショで動けなくなってる」と呟いた言葉に、小さな命へ向ける眼差しに優しさを感じた。
「トチやアカシアの蜜を採りに行く時には4段で持っていきたいんで……。春になってからの立ち上がりを早くするためには、越冬に入る時に、入りきらないぞというくらいのギッチギチの満群の単箱にしておきたいんです」
「今の時点はもう来春に向けての飼育です」と昨日、簗場さんが言っていたことを思い出した。現在の時点で、全面蜜蓋の蜜巣板は引き上げて保管し、春の奨励給餌の時期に与える。現在の群数は72群。現在、無王の群もあるので、移虫した女王蜂が乙部養蜂場から帰って来ても群数は変わらないと、簗場さんは言う。
「巣箱の前に緑色のテープが斜めに貼ってある群は、成績の悪い奴。その群の王は今日移虫した王と入れ替える。72群は維持したいですね。会社でやってきたQ(クオリティ)C(コントロール)D(納期)という品質保証が蜂にも使えますね。これ以上無理という限界を知っていますから……。奨励給餌に砂糖水を与えていないので、掃除蜜をする必要はありませんから、全部天然の蜂蜜なんで自信を持って(蜂蜜を)買ってもらえますね」
卵や幼虫のいる1段目と2段目の巣板にBKC液を噴霧する
BKC液を掛けられてびしょ濡れになった蜂たち
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