2024年(令和6年11月) 81号

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愛情が足んないからだよ

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 一旦事務所に引き返して、慶助さんが養蜂を始めるきっかけについて聞いた。

 「私が27歳の時だったかな、リンゴを送る木箱の中に巣を作った日本蜜蜂を貰って飼ったんですけど、(蜂のことを)よく知らなかったし、その当時は蜂がおっかなかったから、そのまま管理もしないで軒先に置いていたら、春先になると段々蜂が巣門から出なくなっちゃってね。それでリンゴ箱をひっくり返してみたらスムシにやられちまって、蜂は2、3匹しかいないような状態だったんですよ。そんで、悔しくてさ、近所の西洋蜜蜂を飼っていた人に2群分けて貰って始めたんだよね。当時は傍陽に蜂を飼っている人が5、6人は居たんだよね。試行錯誤だったけど、それはそれなりに蜜が採れたんだよ。蜂の数を増やしてからの方が段々難しくなってきたね」

 慶助さんは、冬のプロパンガスの販売と夏の養蜂を両立させ、現在の小牧蜂場と小牧奥蜂場は買い取り、自らの土地にして発展させてきた。そこに迫ってきたのが自らの高齢化である。二人の息子はそれぞれの仕事を持っていて養蜂を継ぐことはできない。自分の代で終わりになるかと、諦めかけていた時に孫の力斗さんが「俺がやる」と言ってくれたのだ。

 「蜂を怖がらないのが良いね。その分、刺されることもあるから『愛情が足んないからだよ』というと、私が刺された時には『じい、愛情が足んないからだぞ』と言い返してきますよ。そういうのも孫とやっていると楽しいんだよね。やり方の違うこともあるけど、今はもう力斗の言うことを聞いていますね」

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