ベタ蜜※の蜜巣板が入っています
約150群の巣箱を置く小牧蜂場は買い取って自分の土地になっている
話を聞いているうちに小牧蜂場に到着した。ここには約150群の巣箱が置かれている。蜂場に軽トラを乗り入れると慶助さんは、素早く運転席を降りて列の端に置いてある巣箱の傍へ行った。近くに来るよう私に手招きする。「えっ、面布を被らないで巣箱の傍へ行くのか」と一瞬躊躇したが、ここで怯(ひる)んでは取材者のメンツに関わる。「この巣箱を持ち上げてみてください」と慶助さん。巣箱を両手で持ち上げようとしたがビクともしない。巣箱の片側に手を掛けて持ち上げると、辛うじて片側だけなら持ち上げることができた。「重いでしょ、ベタ蜜の蜜巣板が入っていますからね。これ(蜜巣板)を抜いてやらないと(女王蜂が)卵を産む場所がないですもんね」。越冬前に卵を沢山産ませておかないと、春の立ち上がりが遅くなることを心配しているようだ。
小牧蜂場では特に作業はしないまま、軽トラで小径をさらに奥へ移動すると、ほんの1、2分で小牧奥と呼ぶ蜂場に到着だ。100群ほどの巣箱が置いてある。ここでは軽トラを降りることもなく、巣箱の間を軽トラで走り抜けた。「できるだけ巣箱の近くまで車で行けるように、巣箱の列の間隔を空けているんです」。労働の軽減化に積極的な様子が伝わる。
※ベタ蜜:ミツロウで巣房の蓋をされた糖度の高い蜂蜜の入った巣板
孫と一緒に仕事をするのが楽しそうな慶助さん
越冬に入る前にダニ対策もしておかなければならない。女王蜂を隔離すると産卵を続けることはできない。、隔離する前に産んだ卵が働き蜂の成虫になるまでに21日間かかる。その後の巣房は卵もなく幼虫も居ないため蓋がなく、働き蜂の成虫に付いたダニには駆除剤が効果的だ。春から夏にかけての繁殖期には雄蜂枠を入れて、好んでダニが取り付く雄蜂の幼虫をダニもろとも切り落とす2段構えでダニ対策をやっている。しかし、慶助さんの気掛かりは、長野県は冬の寒さが早くやってくるため、産卵が暖地より早めに終わる。長い間、女王蜂を隔離しておけば、それだけ蜂数が少なくなって春の立ち上がりが遅くなってしまうことになる。慶助さんはダニの状況と蜂数の変化を睨みながら、試行錯誤を続けている。
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