2024年(令和6年11月) 81号

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蜂児がこれしかないですから

 翌朝、「朝方は気温が下がっているので、ゆっくり始めるから」と力斗さんに言われ、午前10時に事務所に集合して小牧奥蜂場へ。力斗さんは新調したばかりの白い面布を着けようとしたが一瞬躊躇して、麦わら帽子と一体になった古い面布に着け替えた。「これ爺の匂いが付いているけど、こっちにするか。こっちの方が格好も良いもんな」と、ブツブツと独り言。革手袋を着ける前に、左手首にサポーターを捲いている。「靱帯を傷めちゃって手術になるかも知れない」と、小声で教えてくれる。前日、私が持ち上げようとしてビクともしなかった重い巣箱を一人で持ち上げ移動させるのは、手首にかなりの負担なのだろう。この日の内検は、女王蜂が居るかどうかとダニの寄生状況を確認するのが主な目的だ。

 力斗さんは前もって調べておいたアレチウリの蜜で圧迫している蜜巣板を抜き出して、継ぎ箱に集めている。「ここら辺の巣箱も圧迫がひどいんですよ。蜂児がこれしかないですから」と、蜜蓋が掛かった巣板を抜き出して私に見せる。場所によってはダニ駆除剤のアピバールを差し込んだ巣箱もある。「ここら辺だけはアピバールを入れているんですけど、他には入れてないんですよ……」と、ちょっと私が巣箱の中の写真を撮るのを気にしているようだ。できるだけダニ駆除剤は使いたくないという気持ちが伝わってくる。「今年はだいぶ(ダニを)落とせてはいると思うんだけどな」と、呟いている。

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