巣箱の中が蜂だらけ
「訪ねてくれた人に何か一つでもお土産に」と慶助さんが作っている畑で
翌日の朝、事務所を訪ねると、小路の向かい側に畑らしい土地があるのだが、畑というには少々荒れているし、野原というには人の手を感じさせる空間になっている。慶助さんに聞いた。
「こんな山ん中に来てくれる人があるから、そん時はお土産にネギ一本でも持って帰ってもらえるようにしてんです。せっかく来ていただいたお客さんに楽しく帰ってもらおうと思って……」
話からすると、どうやら畑のようだが実っているのは赤トウガラシの他に何もない。傍らで慶助さんが苦笑いしている。
慶助さんが巣板を取り出して力斗さん(左)に渡す
この日は、朝から力斗さんと慶助さんが一緒に小牧蜂場で内検し、昨日と同じようにアレチウリ蜜で圧迫している蜜巣板を取り出して冬囲いの準備に入ろうとしていた。力斗さんと慶助さんが共に麦わら帽子に面布を着けているが、慶助さんの麦わら帽子はガムテープでグルグル巻きになっている。「面布にも穴が開いているけど……」と、笑いながら特に気にしている風ではない。
「11月20日頃までには冬囲いを終わらせたいですね。12月初めには越冬のために埼玉(県)の蜂場に運ぶんでね。1月末ぐらいに埼玉へ様子を見に行くんですよ。蜂を飼っていて一番嬉しいのは、春になって、冬囲いで巣箱の仕切板の外側に入れてあった新聞紙や毛布を蜂が齧(かじ)って巣箱の中が蜂だらけになっているのを見ると、それが一番嬉しいですね。採蜜の時よりも嬉しいですね」
慶助さんの目が輝いている。養蜂家の目だ。
力斗さんがアレチウリの蜜で一杯になった蜜巣板を取り出して慶助さんに渡す
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