淡々とした静かな作業が続く
あづり蜂場でも3人が一列になって淡々と自分の仕事を進める
高速道路を降り国道167号から260号を2時間余走った。蜂場に着く手前のコンビニで朝食用のおにぎりと昼食用のパンを買い込んで、すぐに出発。正浩さんが運転しながらおにぎりを齧っている。「北海道へ行く時は車を停めることはできませんので、いつもこんな感じですよ」と、正浩さんの気持ちはもう臨戦態勢だ。
「湾やもんでに入り組んでいますけど、そこはもうすぐ海です」と、正浩さんが教えてくれる。日本で真珠の養殖が最初に始まった英虞湾(あごわん)を外洋から守る腕のように突き出た半島の先端まで走った。
周りに水仙の花が咲いたあづり蜂場に到着すると、トラックの荷台に燻煙器を3つ並べて正浩さんが準備を始めた。ほぼ同時に到着した英幸さんと山田さんは、その間に代用花粉のパックを巣箱一つ一つの前に置き、砂糖水の入ったポリタンクを蜂場の数カ所に間隔を空けて置いていく。花の時期までには少し間があるので、それまでの餌として砂糖水は必須だ。蜂場に到着しても、誰も何も指示しない。蜂場に到着したら最初にすると決まっている暗黙の作業なのだ。
港の奥と呼ぶ蜂場の先は、すぐ湾になっていて海風が激しく吹き寄せていた
前日の桑名の蜂場と同じように、3人がそれぞれ巣箱の列に並んで一箱ずつ内検していく。早く終わった者から順に列の後ろに回り次々と移動する。3人共、見事に同じペースを維持している。ある時、山田さんが砂糖水を給餌箱に入れ終わった時が、正浩さんの見ていた巣箱の給餌箱に砂糖水を入れるタイミングだった。山田さんが「7分目くらい」と声を掛けると、「半分」と正浩さんが応える。お互いに、そんな気遣いは偶(たま)に見られるが、3人が言葉を交わす場面はほとんどない。淡々とした静かな作業が続く。
「静かに蓋を開けて、そっと巣枠の上の麻布を捲(めく)った瞬間に、その群の状態は分かりますからね。(燻煙器の)煙を掛けた時に上がってくるような蜂は要注意。沈んでいく蜂はきちっとしたええ蜂なんです」
巣板を持ち上げて巣房の中を確認する作業はほとんどしない。ゆっくり麻布をめくり群全体の状態を確認すると、砂糖水を給餌箱に入れ代用花粉のパックを巣枠の上に置き、しずかに麻布を被せて蓋を閉める。とにかくスピードのある内検だ。この日の志摩半島の作業は、冬眠明けの最初の内検なので、代用花粉を与えて蜂たちを「春が近いぞ」と目覚めさせるための「建勢」作業なのだ。
あづり蜂場での内検が終わると英幸さんが釘で巣箱の蓋を止める
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